丁寧な所作を心掛けよう
禅の世界には「身心一如」という言葉があります。私たちの身と心、つまり、肉体と精神は一つである、決して別のものではない、ということです。
私たちの日常を振り返っても思い当たることは多いと思います。緊張しているときや不安を感じているときは姿勢や表情にも表れていると思いますし、反対にゆったりリラックスしているときは外見からもその心のありようが見て取れるはずです。
逆に言えば、緊張してものごとに手がつかなくても、深呼吸して一つひとつの所作を落ち着いてやってみると、次第に心も落ち着いて来た、という経験がある方も多いでしょう。 そう、身体と心は一つなのです。
禅の修行道場ではこの考え方をとても大切にしています。 禅の世界では、古くは中国の唐代から、「清規」と呼ばれる生活の軌範が詳細に規定されて来ました。
道元禅師は中国で修行に励まれた方ですが、若き道元禅師が中国での修行時代に心打たれたことの一つが「清規」の素晴らしさであったと言います。「清規」という中国禅が培って来た伝統は道元禅師の目に鮮烈に映ったのです。以来、曹洞宗の修行道場では、現在でも清規に基づき規則正しい生活を送っています。
「威儀即仏法、作法是宗旨」。禅の道場でよく知られている言葉です。
威儀とは私たちの身なりや所作を言います。私たちの姿や形、諸々の作法はそのまま仏の教え(仏法)だというのです。それゆえに僧侶は日常生活の一つひとつを仏行として丁寧に取り組んで来ました。
丁寧な所作は豊かな人間性を育てる。
忙しい日常にこそ、思い出したいことです。