復興支援活動紹介(10)全国曹洞宗青年会の行茶ボランティアに参加して
東日本大震災発生後、全国曹洞宗青年会(全曹青)は「全国曹洞宗青年会災害復興支援現地本部」を立ち上げ、活動をしてきました。福島県の法輪寺寺族、高崎ひろみさんと洞雲寺寺族の東溟(とうめい)みはるさんは、全曹青が行っていた行茶活動(傾聴ボランティア)にお手伝いという形で参加しました。それから今日に至るまで全曹青と一緒に仮設住宅を訪問し、被災者の耳に声を傾けているお2人に、お話を伺いました。
仮設住宅を訪問するようになったきっかけについてお伺いします。
――東日本大震災によって多くの方が被災しました。町は津波によって壊滅的な被害を受け、昨日まで普通に会話していた人が一瞬にして命を奪われてしまったのです。とてもではありませんが、目の前で起こっていることが現実のことには思えませんでした。被災して困難な状況にある方に対して、自分達に何かできることはないだろうかと考えていた時、避難所で活動をしていた全曹青の行茶活動に参加させていただいたのです。それから今日に至るまで、お手伝いという形で活動してきました。
実際仮設住宅に訪問してみていかがでしたか。
――活動の内容は主に行茶活動でしたが、全曹青や町のサポートセンターのお手伝いという形で参加させていただいたので、時には一緒にビーズブレスレットを作成したり、かき氷を振舞ったりと、様ざまな活動に携わることができました。最初はどんな話をすればいいのかも分かりませんでした。事前に講習を受けて注意点等を教えていただいたのですが、いざ現場に入ると震災によって大切な家族や家を流された方に対して、どんな言葉をかければよいのだろうという戸惑いがありました。しかし、震災から1年経った4月頃から毎週のように仮設住宅に訪問しているうちに、やはり「こころのケア」が求められているのだなと実感しました。
活動を続けていく中で、戸惑うこともあったとおっしゃいました。
――東日本大震災は、これまで経験したことのないような大災害でした。被災された方も当初は何が起こったのか分からない、目の前で起こっていることを現実と受け止められないこともあったと思います。こちらから災害の話はしないようにと言われていましたが、何度か通ううちに震災当時の様子を話してくれる方も出てきました。中には涙ながらに当時を振り返られる方もいらっしゃいましたし、津波被害を受けた方の中には、「例え映画であっても海の映像を見たくない」と、災害がトラウマになっている方もいました。それだけつらい思いをされた方の苦しさや思いは、とても計り知ることができません。そんな話を聞く度、何もできない無力さに打ちのめされました。ただ、そんなつらい経験をしたけれども、お茶を飲みながら気持ちを吐き出すことで、少しでも心が落ち着くのであれば、また、この一時だけでも楽しく過ごしてもらえるのなら、私達が活動する意味もあるのではないかと思うことで、今日まで続けることができました。
仮設住宅を訪問することにどんな役割があるのでしょうか。
――仮設住宅に入居することによって、地域のコミュニティーがバラバラになってしまいました。一人暮らしや特に高齢の方で孤立してしまう方もいらっしゃいます。ただ集まってお茶を飲みながら話をするだけなのですが、それがきっかけとなって、仮設住宅でのコミュニティーが構築されたり、新しい交流が生まれたりするきっかけになればいいなと思っています。訪問を続けているうちに入居者から「交流の場を設けてくれてありがとう」と言われた時は嬉しかったですね。また、入居者の中には、習い事に積極的に参加するようになったり、ガーデニングを始めたりするなど、少しずつ前を向く空気が生まれています。中には、復興に向けてアクリルたわしを編んで販売している方もいらっしゃいました。被災された方自身が進んでいく姿に、逆に元気をいただいています。
今年で震災から3年目になります。
――震災当初は、食べ物もない、トイレもない、お風呂にも入れないといった、ある意味同じ環境の中で、助け合い励まし合いながら、頑張ってきたと思います。しかし、震災から3年目となり、年齢、家族構成、収入などで格差が出ています。自宅再建が出来た方はまだ一部で、仮設での生活をよぎなくされている方が多いのが現状です。原発事故により故郷に帰りたくても帰れない方がいることも忘れないで欲しいと思います。仮設住宅も今年で3年目を迎えますが、復興にあと何年かかるか分かりません。当初に比べると私達が仮設住宅を訪問する機会も少しずつ減ってきていますが、現場から声をかけていただける限り、これからもお手伝いしたいと思います。また、今回の災害において、京都や静岡等全国から支援物資を持って駆け付け、励ましの言葉をいただいた、全曹青の方がたには感謝の気持ちでいっぱいです。