大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌 ヨーロッパ国際布教総監部予修法要開催報告
2023年10月6日から8日までの3日間、フランス共和国の首都パリから車で3時間程の郊外にあるブロア市に所在する禅道尼苑で、大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌予修法要が厳修されました。併せて、ヨーロッパ国際布教総監部主催、現職研修会が執り行われました。
6日の夕刻には日本、欧州はもとより北米、南米、世界各地から150名を超える僧侶が到着、事前に割り当てられた部屋で旅の荷物を解き、薬石となりました。翌日7日の朝には全員が冷たい空気の中、まだ暗いうちから法堂に集まり、暁天坐禅、朝課諷経をお勤めいたしました。朝課罷、辺りが明るくなる頃には初代ヨーロッパ国際布教総監の弟子丸泰仙師はじめ、この地で遷化した僧侶たちの墓石を思い思いに手を合わせて廻り、その後シャトーと呼ばれる建物に集結して一緒に袈裟を外すのが禅道尼苑の日課です。
その日の午前中は講師として日本からお越しいただいた柿田宗芳師、そして峯岸正典ヨーロッパ国際布教総監による現職研修会の講義が行われました。柿田宗芳師には「瑩山禅師の御生涯とその思想」と明年行われる「大遠忌法要」について講義を行っていただきました。流暢なフランス語で講義を始めると会場からは歓声が上がり、質疑応答も活発に交わされました。また、峯岸総監から、「法要の意義」について講義がなされました。
参加者の方々は各講義中、メモを取りながら熱いまなざしで受講されており、宗門の法灯護持の根幹をなす法要に関して理解を深める時間となりました。
午後の研修会では南アメリカ国際布教総監部の田原良樹書記、国際センターの西村全機書記を中心に、主に大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌予修法要の進退をひとつひとつ細かく確認しました。歩き方、立ち位置、磬子の音量、通訳を入れた法要解説のタイミングにまで気を配り、最後の一瞬まで法要をよりよいものにする熱意が皆の間で共有されました。
夕方には日本から深川典雄教化部長を迎えて五鏧三拝、その後、大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌特為献湯諷経が峯岸正典総監による導師のもと行われました。
その夜には、ヨーロッパ特有の、軽食と飲み物が用意された歓談の時間〝アペリティフ〟を経て、参加者全員で晩餐会が行われました。久しぶりに顔を合わせる世界各地の文化を担う個性豊かな宗侶たちが各国の言葉で愉しそうに交流を図る様子は、今後の曹洞禅への希望を感じさせます。
最終日の8日も暁天坐禅、朝課諷経は如常に行われました。朝の坐禅を楽しみにしていた参禅者たちは振鈴前の星明かりを頼りに一人、また一人と堂内に座布団を敷き、その上に坐蒲を置いて坐り、静かに夜明けを待ちます。
朝課後、各自で小食をとり、午前9時から大本山總持寺開山太祖瑩山紹瑾禅師700回大遠忌献供出班法要が深川典雄教化部長を導師として勤められました。供物の一つ一つを丁寧にお供えされ、十八拝の礼拝がなされ、出班焼香では両班の現地宗侶が香を焚き、随喜した僧侶と参列者も共に九度のお拝を行じました。維那は管内国際布教師にお務めいただき、日本語で疏が読まれました。150名以上に上る参列者がともに声を合わせ読経する情景は荘厳かつ特別な空間となりました。
引き続きヨーロッパ国際布教物故者法要がワンゲン霊元国際布教師を導師として厳かに執り行われました。ヨーロッパで国際布教に尽力した僧侶たちの名前が読み上げられると涙する者も。法要後のご焼香には長い列が続きました。
全法要が無事円成し、シャトー前で記念撮影を終えると、環境に配慮して包装された手作りの精進弁当が参加者に配られ、別れを惜しみながらも笑顔でハグや握手を交わし、それぞれ自家用車、大きなバン、大型バスや電車で、一人ひとりが日々の修行道場へ向けて帰路につかれました。
今回の行持では、特に欧州の僧侶による洗練された法要進退に、日本より随喜した僧侶たちからも驚きの声があがりました。欧州の寺院や禅道場では特為献湯諷経や献供出班諷経といった法要を経験することは日本国内に比べるとほとんどありません。その中で、細かい所作や仏具、鳴らしものの意味を話し合いながら、特に若手の僧侶たちが熱心に学び、体得していく様子は、海外における曹洞禅の新たな時代を予感せずにはいられませんでした。
曹洞宗の教えが伝わり約57年がたったヨーロッパの地において、嫡嫡相承されてきた仏祖の命脈に触れる機縁に感謝を申し上げるとともに、今後のヨーロッパにおける仏祖の坐禅のさらなる発展、正法興隆を祈念して、当総監部管内の報告といたします。