平成26年度梅花流全国奉詠大会 ~大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌予修奉詠 開催報告
5月28日(水)・29日(木)の両日、平成26年度梅花流全国奉詠大会が島根県立浜山体育館カミアリーナで開催されました。島根県の東部は、「縁結びの神」として知られる大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を祀る出雲大社(いずも おおやしろ)をはじめ、多くの古社で有名な出雲、西部は2007年に世界遺産に登録された「石見銀山」や、万葉の歌人・柿本人麻呂の終焉の地として知られる石見(いわみ)、北部は島根半島から沖合50㎞、独自の生態系が随所にあり、風光明媚な地形が多くある隠岐の3国に分かれます。
両日で8000人を超す講員の方がたが参加された島根県大会は、本来なら平成22年度に行われる予定でしたが、新型インフルエンザ発生の影響や東日本大震災、60周年記念大会開催などで、延期や中止を余儀なくされました。そのため島根県梅花講員にとっては、やっとの思いで開催にこぎつけたため、感慨もひとしおの大会となりました。
また、明年には大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌を控えているため、今回は大遠忌予修奉詠が併修されました。峨山禅師は「二十五哲」と呼ばれる多くの弟子を育成し、住職を一定期間で交代させる「輪住制」を確立され、特に「五哲」と呼ばれる高弟が開創した「五院」を中心に總持寺を護持されてきました。つまり峨山禅師は、「人材育成」と「教団の将来ビジョン」を持ち、曹洞宗の教えが全国展開する基盤を700年近くも前に作られた方といえます。
オープニング
大梵鐘が鳴り響くなか会場は徐々に暗転、いよいよ大会の幕開けです。轟く雷鳴、レーザー光線による稲光、「八雲たつ出雲」と詠まれる如くステージ上に流れる雲間に不気味に光る赤い目がうごめきます。落雷一閃、出雲神話に登場する龍の如き大蛇の姿がステージに現れました。おどろおどろしい大蛇がステージ左右にはけると、中央から副大会長・齋藤裕道 伝道部長が登場しました。
齋藤副大会長が「今日一日、一期一会のお唱えに、存分に親しんでください」と声高らかに本大会の開会を宣言した後、地元出雲市のたちばな保育園の年長児が両袖から各7人ずつ、ばいかくん(ばいかのみことくん)・ばいかさんと共に登場し、緊張した面持ちで献灯献花に臨んでいました。
引き続き行われたお誓いは、1日目は島根県洞光寺梅花講の小倉博子さん、宗淵寺梅花講の小松仁さん、松源寺梅花講の荒金芳江さんが、2日目は観知寺梅花講の浅津美保子さん、桐岳寺梅花講の木村直子さん、洞光寺梅花講の大木典子さんが挙唱司を務められました。
第1部 開会式
開会式では内局、梅花講審議会委員、梅花流専門委員らが両班を務め、全員で「三宝御和讃」を唱えるなか、伊藤晧元島根県第2宗務所長と大会長・佐々木孝一宗務総長のご先導のもと、大導師を務められる大会総裁・曹洞宗管長・大本山總持寺貫首・江川辰三禅師が入堂されました。拈香法語に引き続き、般若心経が唱えられた後、「大聖釈迦牟尼如来讃仰御詠歌(高嶺)」の奉詠となりました。
その後、会場の参加者と相見の拝を行った江川禅師より、「皆さまが志をもって、ひたむきにお唱えするお姿は、大変に厳かで尊く、身心を挙した詠道によって、人びとを魅了し、深い法悦に導きます。まさに慈悲行の実践です」と御垂示がありました。
第2部 式典
大会長の佐々木孝一宗務総長が「(曹洞宗では、)かねてより『向きあう・伝える・支えあう』とスローガンを示してまいりましたが、特に梅花流は『伝える』という役割に大きな力を持っております。どうぞ、歴代祖師がたのみ教えを讃え、敬虔に明るく、おおらかにお唱えいたしましょう」と式辞を述べられました。
引き続き伊藤所長が「度重なる中止や延期が重なりましたが、今大会の開催をじっと待ち続けました。それができたのは、島根県の梅花講員が地元で全国大会を行うことにより、梅花講をさらに盛んにしようという熱い思いがあったからに違いありません」と挨拶された後、島根県梅花講の皆さんが、島根県旗の色である茶色の布を振って歓迎の気持ちを表すと、会場に拍手が沸き起こりました。
また、来賓紹介では、出雲大社宮司・出雲国造(こくそう)の千家 尊祐(せんげたかまさ)氏が紹介されました。出雲大社では60年ぶりの大遷宮が進行中ですが、ご多忙のところ当会場に足を運んでいただきました。
折しも大会開催前日の27日に、宮内庁から高円宮家の次女典子さまと、千家家の長男国麿(くにまろ)さんの婚約が内定したと発表があり、司会者がそのことを報告すると、場内の参加者は拍手にて祝意を表しました。まさに縁結びの神さまを祀る出雲大社のご利益を、目の当たりにすることができました。
第3部 登壇奉詠
登壇奉詠は今年も代表登壇となり、100名の代表登壇以外の方がたは、自席で座りながら立行作法にてお唱えいただきました。ひときわ会場の目を引いた登壇者は、今回で3回目の参加となる北海道襌龍寺講の子どもたちです。
2011年に梅花流特派師範が巡回指導に行ったとき、教場となった襌龍寺の子どもたち3人と襌龍寺講員のお孫さん2人がご詠歌に関心をもち、その年の年末に5名全員が「クリスマスプレゼントは要らないから梅花法具が欲しい」と言ったそうです。この一言をきっかけに法具を揃え、本格的にご詠歌を始め、現在でも全員揃って月2回のお稽古に励んでいます。今大会では全員が前列中央に坐し、立派に「追善供養御詠歌(妙鐘)」をお唱えしていました。
両日それぞれ12組の登壇の締め括りとなる島根県の梅花講員による「同行御和讃」の奉詠が終了した後、昼食休憩を挟み、中野重哉 人事部長の呼びかけにより曹洞宗義援金の募金活動が行われました。場内を係の者が募金箱を持って巡回し、一日でも早い被災地の復興を望み、被災された関係者が平穏な日々を迎えられることを願って止まない方がたから、2日間で合計3,546,853円となる慈悲深い浄財をいただきました。
第4部 大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌予修奉詠
予修奉詠に先立ち、大遠忌に関する映像が流れ、ステージ上の照明が明転すると、中央には峨山禅師のご真牌と頂相が奉安され、内局、梅花講審議会委員、梅花流専門委員、更に梅花流特派師範が整列するなか、江川禅師より、会場の参加者へお言葉がありました。江川禅師は「この度のご奉詠によって、峨山禅師のご遺徳を一層讃え申し上げます。梅花流を含め、宗門の大切なみ教えは今日まで脈々と相承されてきました。その有り難さ、未来へ伝えていくことができる意味の大きさ、重さを深く噛みしめていただきたいと、心から念願いたします」と述べられました。
引き続き江川禅師ご親香のもと、大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌予修奉詠が行われました。「大本山總持寺二祖峨山禅師讃仰御和讃」を会場の参加者全員で奉詠し、次いで壇上の左右に分かれた特派師範のみによる「大本山總持寺二祖峨山禅師讃仰御詠歌(永光)」に、参加者一同が、目を閉じて耳を澄まし二祖さまのご遺徳に想いをはせておりました。
予修奉詠後、ステージを降りられ、親しく場内の皆さまの間を通って退場された江川禅師でしたが、特にお言葉の中に「二祖さまの御詠歌を練習し、来年は詠題をお唱えしたい」旨のご披露があり、来年の大会が楽しみです。
第5部 清興
今年の清興は、浜田社中による石見神楽(いわみかぐら)でした。石見神楽は、島根県西部地方の浜田市を中心とする地域に古くから伝わり、神社の祭礼で夜を徹して演じられる伝統芸能です。今回の演目は「大蛇(おろち)」という出雲神話に登場する須佐之男命(すさのおのみこと)の大蛇退治の物語でした。約30演目がある石見神楽の中でも特に有名な物語で、約1300年前の最古の歴史書「古事記」や「日本書紀」に書かれている日本神話から題材をとったものです。
オープニングにも登場した龍にも見える17mを超える蛇と、須佐之男命との激しい戦いに圧倒されました。特に8匹登場した大蛇のうち、4匹が会場の最後尾や左右から登場し、参加者の間近を通る演出や、巧みに大蛇を操る熟練された技術と民間信仰が融合された芸能を、講員の方がたは堪能されていました。
第6部 閉会式
詠讃師による「坐禅御詠歌(浄心)」の独詠のなか、心静かに椅子坐禅をした後、副会長の齋藤伝道部長より閉会の言葉がありました。齋藤副会長より、本大会参加いただいた講員の皆さまと関係者への感謝を述べた後、次回の開催地が発表されると、会場は一気に盛り上がりを迎えました。
次回は大本山總持寺がある神奈川県横浜市が会場予定のため、初日は清野宗元神奈川県第1宗務所長、2日目は山下玄機神奈川県第2宗務所長よりご挨拶があり、両所長ともに、来年の峨山禅師の大遠忌に花を添えていただきたく、一人でも多くの大会参加を呼びかけていました。
参加者全員による「まごころに生きる」が大会のフィナーレをかざり、盛会裏に幕を閉じました。各宗務所から参加された講員の方がたは、名残惜しい気持ちを抑えながら、各日、約500人の地元島根県梅花講員に温かく見送られ、会場を出られました。
このような規模のイベントの準備・運営には幾多の苦労や困難があります。しかし、長年、大会開催を待ち望んでいた運営関係者の強い思いが原動力になり、互いに支え合い、入念な打ち合わせを重ねて一つ一つ解決し、見事な集大成となりました。
次年は大本山總持寺二祖峨山韶碩禅師650回大遠忌の正当をお迎えします。大本山總持寺のお膝元で、是非、全国梅花講員の皆さまによる日頃の研鑽の成果を披露していただきたく存じます。全国6,400余りの梅花講、約15万人の講員からなる梅花流のますますのご発展、講員のみなさんのご健勝を願い、大会の開催報告とさせていただきます。