【シャンティ国際ボランティア会(SVA)たより】令和6年7月豪雨 活動報告

2025.04.16

2024年7月25日から、東北地方を豪雨が襲い、河川の氾濫や地すべりなどの被害が発生しました。青森県、秋田県、山形県、栃木県、新潟県の5県で被害が大きく、11月21日時点で人的被害は10名(死者5名、負傷者5名)、住宅被害は2098棟(全壊25棟、半壊578棟、床上浸水87棟、床下浸水1399棟、一部破損9棟)が報告されています。

最上川中流に位置する山形県最上郡戸と沢ざわ村は、人口約4,000人の村で、主に古口ふるくち地区、蔵岡地区の浸水被害が大きく、住民の約14%という大きな割合の被害がありました。今回を含め、この6年間で3度の浸水被害を経験し、いずれもさまざまな防災の取り組みが行われてきたにもかかわらず、大きな被害が発生しました。

平成30年には、角間沢かくまざわ川からの水を排出するための排水ポンプを設置するも、停電や排出口が詰まるなどの不具合により機能せず浸水被害が発生しました。令和6年には角間沢川からの内水氾濫を防ぐための輪中提わじゅうていが完成したものの、本流である最上川の氾濫により大きな浸水被害がありました。

私は、これを受けて8月1日に能登半島より山形県に入り、調査を開始しました。SVAの宗門関係者のつながりから、戸沢村蔵岡地区にある長林寺さまを訪問しました。被災から一週間後にお盆を迎えるにも関わらず寺全体が浸水し、床下や墓地には泥が堆積しており、背丈を越えるほどの浸水の跡が残っていました。炎天下の中、県内外の曹洞宗青年会をはじめとする多くのボランティアが泥の掻き出し作業や墓清掃をする姿がありました。

長林寺さまのご住職から話をうかがった際、自身が被災しているにも関わらず「寺にはたくさんのボランティアが来てくれている。一番心配なのは地域住民」という言葉を聞き、集落への聞き込みを行いました。蔵岡地区のほとんどが長林寺さまの檀家ということもあり、檀務を担われている僧侶が顔を出すと安心したように困りごとや当時の被害状況を涙ながらに話す方もおり、日ごろの寺と地域とのつながりを大切にされている様子が心に残っています。

被害状況の調査

SVAでは、戸沢村災害ボランティアセンター(以下、災害VC)を通じて、浸水した家屋の乾燥作業で必要となるサーキュレーター58台と冷凍・冷蔵ストッカー一台、雪の厳しい被災地において必要となる暖房器具(石油FH)50台を支援しました。サーキュレーターは、災害VCで活動する技術系ボランティアを通じて活用され、暖房器具は在宅避難者やみなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)などへ避難された方へ届けられました。災害VCからは「必要な機材はほぼ八月中に確保することができた。また、早期にまとまった数の暖房器具の支援があったことで、浸水被害にあった方へ冬に備えた支援をすることができた」という声をいただきました。

現在、戸沢村では仮設住宅が建設されたほか、地域支え合いセンター事業として在宅避難者の見守りやコミュニティ再建の活動が展開されています。その中、度重なる浸水被害により地域が一体となり集団移転する「防災集団移転促進事業」を提案する声も上がってきているようです。

昨年1月に起こった能登半島地震と9月の能登豪雨という厳しい現実に注目が集まる中、ほかの地域でも同じように、住んでいた土地を離れ仮設住宅などへ転居しなければならない人がいることを知っていただきたいと強く思います。そして、安心して住むことができる日常はいとも簡単に崩れ、取り戻すには時間がかかることを思い知らされました。毎年のように起こる豪雨災害は、報道では雨が降った直後しか取り上げられませんが、泥がなくなった後も家の再建に思い悩んだり、新しい住処で孤独を感じたり、想像を膨らませると胸が苦しくなります。私なりに思いを寄せ、何ができるのか考え続けることを大切に過ごしていきたいと思います。

シャンティ国際ボランティア会 国内事業課 国内緊急人道支援担当 中井康博

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