【シャンティ国際ボランティア会(SVA)たより】曹洞宗との連携が神戸での活動を支えた 阪神・淡路大震災から30年を振り返る
今年は、阪神・淡路大震災から30年。NHK連続テレビ小説『おむすび』の舞台のひとつが神戸であり、当時の記憶が走馬灯のように蘇ってきます。私はこの震災において、SVAの現地責任者として、1997年5月まで神戸に赴任していました。宗門との連携について、当時のことを思い出しながら書かせていただきます。
初めての国内緊急人道支援活動へ
1995年当時、SVAは任意団体「曹洞宗国際ボランティア会」として、タイ・ラオス・カンボジアの3ヵ国での教育支援活動に取り組んでいました。タイで始まった活動が、1991年にカンボジア、翌年にはラオスと事業地を拡大。任意団体だったSVAにとって、急速な事業拡大は人材的・経済的にもかなり厳しい状態で、翌年の活動費が大幅に不足するなか、来年度をどうすべきか、場合によっては事業を縮小すべきではという計画予算会議のさなかに、阪神・淡路大震災が発災。会議の議題はおのずと神戸の被災地支援をするかどうかになりました。
「海外の現場は、災害が無くても日常的な〈静かな緊急状態〉。日本で活動すべきなのか?」「当会は海外での支援活動をする団体であり、国内活動によって海外の事業への影響は避けたい」など、議論を尽くしました。しかし、最終的には「何がどこまでできるかわからない、できない言い訳よりできることを考えよう」というNGOとしての思いが共通認識となり、活動がスタートしました。
曹洞宗との連携により活動継続が可能に
そんな中で、大きな支えになったのが曹洞宗の皆さまとの連携でした。被災地・神戸に、全国曹洞宗青年会(以下、全曹青)、曹洞宗両大本山(永平寺、總持寺)の三者による救援対策本部が結成されました。震災以前から全国の曹洞宗青年会や婦人会関係者、曹洞宗僧侶の関係者に支援を受けていましたが、実際の活動現場で協働するのは初めての経験でもありました。
この宗門との連携により、早急に現地を支える基盤を作ることができました。神戸市兵庫区・八王寺さまに当初の活動拠点を確保でき、全曹青のネットワークにより必要な物資が全国から届けられました。たとえば、ボランティア用の毛布が40枚不足していたとき、電話連絡後1時間後に届けられ、FAX1枚に「料理酒10本送れ」と送信したら次の日には届くなど、インターネットが一般に普及していない中、本当にありがたい後方支援でした。
また、典座寮の経験者も多かったため、2~3人で1000人分の食事をつくることはさほど難しいことではなく、多いときには1日2万食、合計で31万食の炊き出しを行い「炊き出しと言えば曹洞宗」という言葉が生まれたくらい、被災地においての炊き出しは有名になりました。
両大本山の修行僧の方々も各現場に派遣されました。永平寺からは5日間のサイクルで6回、延べ36人が役寮と共に派遣され、火葬場からの要請により、他宗派の僧侶と共に「読経ボランティア」、病院の水汲みや炊き出しを行いました。總持寺の修行僧は4名が当初派遣され、約3週間にわたり避難所である兵庫高校で、仮設トイレの清掃、物資運搬や配布などに関わり、同じ避難所に継続派遣したことで、顔の見える関係の中で活動することができました。
その後、全曹青の各県単位の青年会の炊き出しは3月10日まで継続、その後は4月に長田区菅原商店街で「花まつり」を行い、三者合同の現地対策本部の活動を終了し、その後はSVAが引き継ぎ、1997年3月まで現地に事務所を置き、仮設住宅入居者や高齢者の多い市営住宅での高齢者の見守り活動、子どものあそび場づくりの活動を継続して実施することができました。
このときの経験から、SVAは国内外における緊急人道支援活動を開始し、能登半島大震災まで、108回(海外:75回、国内:33回)を実施しました。特に、東日本大震災、能登半島地震などの国内災害においては、曹洞宗の皆さまとの連携により、避難所や仮設住宅での行茶活動を実施し、被災した方の気持ちに寄り添う活動を展開しました。
宗教施設を地域資源として防災減災の取り組み
今後は、発災時の活動だけでなく、防災・減災の活動にも取り組みつつあります。東日本大震災では、宗教施設が避難所として被災された方の受け皿となり、それを契機に宗教施設と各自治体が防災協定・協力を結び、2020年では、329自治体で2065の宗教施設が何かしらの協定を結んでいます。宗教施設の強みは地域に長年にわたり根付き、災害時は避難所だけでなく、炊き出しやサロンの拠点、ボランティアの受け入れなど多くの役割が期待されています。
最近は気候変動により大規模水害、またいつきてもおかしくないと言われている東南海地震の発災が懸念されています。SVAとしましては、日ごろから宗門と連携し、今後も防災・減災事業に取り組んでいきたいと考えています。



シャンティ国際ボランティア会・国内事業課シニアスタッフ 市川斉 記
シャンティ国際ボランティア会
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