【International】SXSW公式セッション参加報告
去る3月9日から18日までの10日間、アメリカ合衆国テキサス州オースティン市におきまして、世界最大級の「音楽」・「フィルム」・「テクノロジー」の祭典とされるSXSW(サウス・バイ・サウス・ウェスト)という行事が催されました。日本でも有名なツイッターなどが世界に広がるきっかけとなったことでも知られており、毎年、最先端の分野で活躍する企業の代表や投資家などが世界95ヵ国から7万人以上も集まる一大行事です。近年では日本からの参加者も1000人を超えるようになり、国内での認知度も高まってきています。
今回初めて、日本政府から経済産業省がこのSXSWの祭典の中でも最も特徴的なインタラクティブ(意見交換)部門に正式に参加をすることとなり、その公式セッションの登壇者の1人として参加する機会をいただきました。
世界の先駆者らが互いにアイデアを学び合う場として知られるインタラクティブ部門には、日本からも多くの優れた新しい動向の作り手が集い、曹洞宗からは伊藤祐司曹洞宗国際センター主事、伊藤大雅書記、さらに、小島秀明両大本山北米別院禅宗寺国際布教主任、横山行敬北アメリカ国際布教総監部書記の4名が派遣されました。
この公式セッションでは、「モビリティから見る高齢化時代の世界の新たなカタチ」をテーマに、司会をパナソニック社の石合泰司主幹が務め、福井県永平寺町河合永充町長と井原慶子慶應義塾大学特別招喚准教授、そして私の3名がパネリストとして登壇いたしました。
ここでは、パナソニック社が福井県永平寺町で現在進めている自動運転車両の実証実験の状況について石合泰司主幹から報告され、永平寺町の過疎と高齢化の現状と、無人運転技術に対する地域住民の期待の声などが河合永充町長から伝えられました。その後、プロレーサーとして世界で活躍した経験を持つ井原慶子氏から有人運転に対する考え方が伝えられました。
そうしたご意見を受け、最後に、そこから見えてくるテクノロジーとの関係について、永平寺での生活や曹洞禅の考え方を交じえ、人とテクノロジーの調和のとれた関係性や、生命そのものを尊ぶ思想が今後の技術革新において益々大切になっていくことなどをお伝えいたしました。
翌3月10日は、経済産業省から、「第0次産業革命」というテーマの下、既存の拡大型の経済社会から持続可能な循環型の経済社会の在り方を紹介されました。そこでは、小島秀明両大本山北米別院禅宗寺国際布教主任が曹洞宗の見解や教えを紹介し、参加者の方々に教義や思想に触れていただく機会となりました。
経済産業省では、来たる2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、こうした公式セッションによる同様の発表を今後も継続する計画があります。
他方で曹洞宗の国際布教活動についても紹介いたしました。例えば、会場の一角で坐禅を組んだり、オースティン市内に所在する禅センターにおいて坐禅会を実施したりと、地元のアメリカ人参禅者と日本人の参加者が、北米で広がる「ZEN」をともに坐り体験しました。これも、日米協会の準備で可能となり、大変有意義な時間でありました。
本行事の開会式で司会を務めたSXSW社のヒュー・フォレスト氏からも、参加者全員に対し、偶然との出会いにおける「ZEN」の重要性が伝えられる場面があり、「ZEN」が日本国外で日常的な言葉として使われていることを改めて認識しました。「ZEN」の思想が急速に世界に広がり、多くの人々の共感を呼んでいる現状を目の当たりにし、日本の伝統的な曹洞禅の考え方や教えを、現代社会という文脈の中で、少しでもわかりやすく一般の方々に伝えていくことの重要性を、改めて強く確認することができました。
最後に、このような貴重な機会をいただき、一人の宗門僧侶として深く感謝申し上げるとともに、今回お力添えをいただきました関係者の方々に対しまして、心より御礼申し上げます。
(北アメリカ国際布教総監部書記・ロングビーチ仏教会国際布教師 横山行敬 記)