【International】SOTO禅インターナショナル主催 2017年度海外子弟研修会開催報告

2018.03.07

本年で3回目となるSOTO禅インターナショナル主催の海外子弟研修会は、好評をいただきましたことから、昨年に続き、ハワイのオアフ島で開催されました。6人の子どもたちと一緒に12月23日から28日までの6日間を、オアフ島の中心ホノルルにある、曹洞宗両大本山布哇別院正法寺で過ごし、ともに学びを深める機会となりました。

ハワイ日本人移民慰霊碑を参拝

この研修会は「曹洞宗とハワイの文化に触れる旅」と題し、ハワイにある曹洞宗の姿を学ぶ他、ハワイの歴史・文化・風習に触れる内容でした。「ハワイ」と一言で言うと、多くの方が連想するのはワイキキの青い海や緑の山に掛かる虹、そして常に暖かい気候に恵まれていることだと思います。それらはもちろんハワイの一面なのですが、本当のハワイを学ぶには、観光地から一歩離れ、現地の人たちの暮らしぶりを見て、学び、体験することで初めて可能になるのではないかと思い、今回のテーマにもあるように、曹洞宗とハワイの歴史を振り返りながら、今のハワイに住む人々の暮らしに迫りました。
研修は、テーマに沿った形で別院内での講義を始め、外での研修を行いました。例えば、ハワイのお寺の法要やその歴史についての講義や、ハワイの曹洞宗寺院を訪問したり、ハワイ国際布教師の活動を見たり、坐禅を組んだり、他の宗教行事に参列したり、また博物館を見学したりと様々でした。 今回の研修で参加者が経験したことをご紹介いたします。まず初めに彼らが学んだことはハワイにある曹洞宗寺院と日本にある曹洞宗寺院との違いです。それは、ただ単純に地域の違いだけでなく、文化や風習の違いによって、同じ曹洞宗であっても、ハワイと日本では異なる活動や法要が行われているということです。

例えば、日曜日にはハワイでは日曜礼拝といい、檀信徒の方々が参列する週間行事があります。これは西洋の文化風習が曹洞宗の活動の中にも定着していったということです。
このような変化を、「郷に入っては郷に従え」と一言で済ませてしまうのではなく、参加者が、なぜ曹洞宗がアメリカの文化や風習を取り入れなければならなかったのかという視点まで理解できるよう、歴史的背景を含めて勉強していただきました。それは、つまり日系社会がいかに異国の土地で社会的に認められていったのかというところまで理解を広げなくてはいけません。
曹洞宗がハワイに根付いてから約115年が経ちます。その間いろいろな社会的・政治的・文化的変化があり、それに順応し、変わらざるを得ない状況があり、今の形が存在しているということです。つまり、先人たちの知恵と努力の結晶が、今日のハワイの曹洞宗の姿に表れているということで、それを実際に見てもらうため日系墓地と、アメリカ人として生涯を送ることを選んだ日系人の多くが眠るアメリカ国立墓地を訪れました。
アメリカ国立墓地は、日本では見ることがなかなかない、多民族の墓地であり、種々の宗教が入り混じった墓地です。日本の墓石のように漢字で書かれている日系人の墓石の隣に、十字架が刻まれているものが並んでいることもあります。それを見ることによって、ハワイのお寺で行われている多くの行事や檀信徒の方々との接し方が理解できるものだと感じております。そして、それを肌で体験して見てもらうために、他の曹洞宗寺院を拝登し、どのように国際布教師が活動しているのかを見学していただきました。

フラダンス体験

次に、ハワイと聞いて多くの方が想像する伝統舞踊、フラダンスを学びました。フラは元々男性が神を称えるために踊られていましたが、今では女性が踊ることの方が多いほどになりました。そして、フラやハワイ王朝の勉強をするのに最適な場所であるビショップミュージアムを訪れ、カメハメハ大王がハワイを統一する前の歴史から今に至る様々なハワイの歴史を勉強しました。一時期キリスト教宣教師によりフラダンスが禁止された時代もあり、それを知ったときの子どもたちの反応は驚きでいっぱいでした。
さらに研修期間がクリスマスということもあり、キリスト教の教会で行われていたクリスマスミサにも参列しました。他の宗教がどのように法要を行い、どのような人々がどのような信仰心を持っているのかなど、多くのことを参加者には感じながら勉強していただきました。
全体を通してあっと言う間の五泊七日の研修ではありましたが、ハワイに植えられた曹洞宗の種が根付き、この100年でどのように変化してきたのか、なぜこのような道を辿ったのかを歴史や社会を通じて学ぶ研修となりました。以下に参加者の感想を紹介いたします。


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「ハワイの中のお寺の違いにも、気付くことができました。お寺を建てた時期によって、造りが少し違ったりなど、近年建てたお寺の方が、日本形式から異なっているということに、気付きました。その他にもたくさんのことを学びました。」 池田楓子 13才

坐禅体験

「経本は、日本の経本とは違い図鑑のようでした。ローマ字で読み方が書いてあったり楽譜も書いてありました。現地でいろいろ学び、現地でしか知ることができないことを知ることができ、良い経験になりました。」  清水正佳 17才 

「仏教についての日本とハワイとの違いに驚きました。日本と全く同じようなお寺の形式を想像していたため、お寺の造りや和尚さんの着物の着こなし、法要の様子などあらゆる場合でハワイ、またその地に住む人々に寄り添う形となっていることが新鮮でした。その背景には労働者として移住してきた移民の存在があり、彼らがハワイのお寺の姿を作ってきたこと、そしてそれが現在にもつながっていることは本当にすごいことだと思いましたし、ハワイの人々にとって仏教というのは身近にあり、とても大切なものなんだなと感じました。」 池田倫子 16才 

「お寺での日曜礼拝という特に印象的だったことがある。日曜礼拝というと日曜日にキリスト教徒の方々が教会に集い、賛美歌を歌い祈りを捧げる、といったことを連想します。少し話が逸れますが、私は音楽を専門に学べる学科がある高校で音楽を学びました。将来はお寺を継ぎ、御詠歌を盛んにしていきたいと考えています。私がピアノで檀家さんと一緒に御詠歌を歌っていくのが将来の理想像でした。そんな理想像がまさにハワイのお寺では行われていることに驚きました。」奥山風雅 19才

「ハワイに仏教が伝わり100年もの歳月をかけ変化したものを現地で学ぶことができ、現地でしか知れないものを知ることができたので、とても良い経験となりました。ハワイの仏教というものを知り、他の海外寺院ではどのように変化し、受け入れられているのかを知り、また海外へ行く機会があれば足を運び体感したいと思います。百聞は一見に如かずといいますが、行かなければ知ることができないものばかりだったので、皆さんにも参加していただきたいです。」岡部悦法 19才

正法寺法堂で

「はじめて両大本山布哇別院正法寺を見たとき、日本とはまるで違うインド様式と言われる外観、座席はキリスト教式、中央は仏教式というお寺の作りに驚きました。その荘厳さ、大きさ、世界に広がる曹洞禅を感じました。ハワイで大切にされ続けている言葉『オハナ』それは人との繋がり。私はこの言葉とこの経験から学んだことをこれからの生活の糧にしたいと考えています。」 宮崎花香 15才 
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太平洋の真ん中に浮かぶ小さな島ハワイが歩んできた歴史や文化を、本研修をとおして学んでいただけたのではないかと思います。それが参加者にとって、世界の広さを学び、これからの人生にとって大切な財産となるものと確信しております。
世界に羽ばたき、明るい未来を作り上げてくれることを心から冀い、今後も可能な限りの支援をいたします。

(曹洞宗ハワイ国際布教総監部記)

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