【人権フォーラム】2017(平成29)年度教区人権学習会開催のお願い

2017.04.10

宗門が、1981(昭和56)年に「『過去帳』等の管理についての指示要望」を全国寺院に通達し、「過去帳」の厳重管理をお願いしてきたことは、すでにご承知のことと存じますが、この宗門の基本原則が未だに徹底されていない現状があります。

この取組み開始以来、30年以上が経過する中で、過去帳等の取り扱いの基本原則を知らない方が増えていることも一因でしょう。また、これまで宗門僧侶が起こした多くの過ちから学んできたことが、知識としての理解にとどまり、自らにも問うべき課題になっていなかったことも理由にあるのではないかと考えています。

そこで、一昨年から、繰り返し、過去帳等の管理について研修を重ねていただいております。未だに過去帳の取扱いに係る問題が惹起しておりますが、一方で、過去帳に関する人権本部への問い合わせも増えており、意識向上を実感しています。

今年度の教区人権学習会においては、曹洞宗人権啓発映像第18作『過去帳と人権―情報管理の徹底を―』を視聴いただき、過去帳がどのように差別に利用されてきたのか、寺院がどのように身元調査に加担してきたのか、2度と同じ過ちを繰り返さないためにも、改めて歴史を振り返りたいと思います。その中で、過去帳等の情報管理の徹底は、「いのち」を守る取組みなのだということをご理解いただきたいと、切に願っています。

 

過去帳と人権―情報管理の徹底を―

 

今作品では、「広島県家系図差別事件」「栃木県宗務所管内寺院住職差別発言事件」「長野県寺院住職過去帳記載人権侵害事件」や最近のインターネット上における部落差別問題、過去帳等のデータ管理の問題点等について取り上げています。ここでは個々の内容について詳述しませんが、DVDとあわせて、「2017年度教区人権学習会開催要項」を教区長宛にお送りいたしますので、ご活用ください。

昨年度は、小冊子「『過去帳』等の管理の徹底を」に掲載のQ&Aをとおして、学習を深めていただきました。今年度も「2017年度教区人権学習会開催要項」にQ&Aを掲載いたしましたので、DVDの内容や設問についての意見交換をお願いします。

 

3つの設問

【見知らぬ方の墓参に関して】

昨年度の学習会で見知らぬ方が墓参に来た場合、どのような対応をすべきか検討していただきました。人権本部からは、当該檀信徒へ電話で確認する等の最低限の対応をお願いしましたが、「電話がつながらない場合も考えられる」とのご意見も頂戴しております。どういう対応が考えられるか、より良い方途について議論を重ねていただくようお願いいたします。

【個人情報の管理について】

檀信徒名簿や会計簿等を、パソコンで管理する寺院が増えていると思います。近年、個人情報の流出が社会問題となっていますが、寺院にとっても他人事ではありません。

企業を例に考えてみると、情報漏えいによりさまざまな損害が生じます。社会的信用は失墜し、顧客対応と賠償の問題に多くの労力を費やさなければなりません。原因究明や再発防止対策、その間の企業活動の停滞、漏えい情報の回収やマスコミ対応等、大変な時間と経費が必要になるでしょう。自分の情報が流出してしまった個人にとっては、犯罪に巻き込まれる不安を抱え続けることになってしまいます。

そうした問題を起こさないためには、どのようにすべきでしょうか。それぞれの普段からの対応策等を共有することで、より安全な管理に努めていただきたいと思います。

【原発事故を起因とするいじめ等について】

福島県出身者に対するいじめや差別が相次いで報道されていますが、中でも、子どもに対するいじめが全国各地で発生していることは、由々しき問題です。東日本大震災直後、福島県ナンバーの車に対する差別や嫌がらせが発生しましたが、こうしたことは形を変えて今も起きているということです。今回の設問は、子どものいじめに焦点を当てましたが、何が問題なのか、我々に何ができるのか、皆さんでお考えください。

 

法律の施行について

昨年、差別解消に関する3つの法律が施行されました。このことは、現実に具体的問題があることを意味します。私たち僧侶も社会の一員ですから決して無関係ではなく、理解しておく必要があるでしょう。

・2016(平成28)年4月1日

「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」施行

通称、障害者差別解消法

・2016(平成28)年6月3日

「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」施行

通称:ヘイトスピーチ解消法(規制法・対策法)

・2016(平成28)年12月9日

「部落差別の解消の推進に関する法律」施行

通称、部落差別解消法

また、本年5月30日に改正個人情報保護法が施行されます。本人の人種、信条、社会的身分、病歴等、その取り扱いに特に注意が必要な「要配慮個人情報」等の規定が導入されますので、是非ともご確認いただくよう、お願いいたします。

 

人権本部からのお願い

 『部落地名総鑑』の再販を目論んだ鳥取ループ・示現舎という出版社(昨年5月号『曹洞宗報』で既報)が、全国の被差別部落の地名等をインターネットで晒しており、大きな社会問題になっています。それに対する各団体の取組みは進められていますが、未だ削除にはいたっておりません。ある地域では、地名情報のみならず、「人物一覧」として数百人に及ぶ関係者の氏名、住所、電話番号等の個人情報までもが無断で掲載されているという現実があります。

部落差別について学ぶ中で、「自分が住んでいる地域にもあるのか調べてみたい」とインターネットで検索する人がいますが、絶対に興味本位での検索はしないでください。安易な気持ちで閲覧することがサイト運営者に多額の広告収入を与えてしまうという報告があり、差別情報の拡散を行う運営者への加担につながってしまうのです。

お釈迦さまは、「生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人ともなり、行為によってバラモンともなる。」(『スッタニパータ』)と、出自による差別を明確に否定し、自らの生き方こそが問われるのだと示されました。

生まれによって誰かを否定するのではなく、授かったこの「いのち」をともに喜び合える心穏やかな世界の実現に向けて、過去帳等の情報をしっかりと管理していただきたいというのが、人権本部からのお願いです。

 

 

 (人権擁護推進本部記)

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