【人権フォーラム】狭山事件の再審を求める市民集会参加報告

2016.07.07

5月24日、東京都日比谷野外音楽堂を会場に、狭山事件の再審を求める市民集会「不当逮捕53年! いまこそ事実調べ・再審開始を!」が開催された。当日は、石川一雄さんを支援する約三千人近くの参加者が結集し、会場を埋め尽くした。

はじめに、組坂繁之部落解放同盟中央本部中央執行委員長より、

「狭山事件第3次再審の闘いは、重要な局面を迎えている。弁護団の証拠開示に向けた取り組みにより次々と石川さんの無実が明らかになってきている。再審開始を実現するため、一万数千の署名を持って、東京高等裁判所・東京高等検察庁に対して要請を行ってきた。

この事件は部落差別に基づく冤罪事件であり、この事件の解決なくして、部落完全解放の大道を切り開くことはできない。私たちは石川さんにかけられた見えない手錠を今年中に何としてでも外さねばならない。裁判所の事実調べ、証人尋問、鑑定人尋問、検察の全証拠開示が実現していけば、必ず無実は明らかになる。そのための皆さまの奮闘と、デモ行進の中で石川さんの無実を一人でも多くの国民にアピールしてもらうことをお願いしたい」

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無実を叫び続ける石川一雄・早智子夫妻

 と開会挨拶が述べられ、その後各政党挨拶を挟み、石川夫妻よりアピールがなされた。以下にアピールの全文を掲載する。

(石川一雄さん)

「いよいよ狭山事件は最終段階を迎えている。この第3次再審を勝ち取るため私たち夫婦は不退転の決意で、全国各地を歩き支援をお願いしている。検察はいまだ数々の証拠を隠し持っており、その証拠を出させることが私たちの闘いである。冤罪を晴らすため皆さまの更なるご支援をお願いしたい」

(石川早智子さん)

「53年もの長い間、狭山事件における冤罪を晴らすため尽力いただいている全ての方々に感謝申し上げたい。これまで三者協議(弁護団・裁判官・検察官による協議)を27回行ってきたが、弁護団の証拠開示請求に対して、今も検察は不見当(見当たらない)、関連性がないとして頑なに証拠開示を拒んでいる。検察の横暴は絶対に許されるものではない。何としてでも、この第3次で勝利するためにも、検察に証拠開示に応じないとは言わせない。皆さまの力で裁判所、検察を包囲していただきたい。現在も東京高裁前でのアピール行動を続けており、雨の日も炎天下の日も雪の日にも彼は裁判所の前で自分の無実を訴えマイクを持って立ち続けてきた。そして多くの人たちが高裁前にかけつけ彼を支援し、その力に支えられている。闘いは厳しいが、彼は皆さまのおかげで元気でいる。

『辛苦の拘禁32年間、多くのものを失ったが冤罪に巻き込まれたおかげで、文字を取り戻すことができた。獄中にありながら多くのことを学び、多くの出会いをいただいた。心が豊かになった。だから決して無駄な時間ではなかった』と彼は言う。

本当に翻弄された人生であったと思う。それでも彼は『真実は必ず明らかになる』と強い信念を持って生き抜いてきた。それは皆さまをはじめ、獄中にありながら彼に文字を教えた看守のおかげである。

事件発生から半世紀を超えた狭山闘争だが、昨年は弁護団や皆さまの力で証拠リストが開示され、大きな成果を得ることができた。厳しい中でも、確実に狭山闘争は前進している。半世紀にも及ぶ皆さまの闘争勝利に向けた闘いが必ず歴史を動かす。そして歴史を動かすのは今であり、私たちも力の限り闘い続けている。この第3次で勝利し、終結できるように最大限の力を心からお願いしたい」

続いて、弁護団から中山武敏主任弁護人と中北龍太郎事務局長が現状を報告。「検察側から今日までに185点の証拠が開示され、自白の疑問や証拠の改ざん、捏造が次々と明らかになっている。逮捕当日、石川さんが書いた上申書と弁護団が提出した筆跡鑑定を比べれば、石川さんが脅迫状を書いた真犯人ではないことは明らかだ」と指摘し、証拠開示、再審開始を強く求めた。

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再審弁護団に加わった小林節氏

新しく弁護団に加わった憲法学者の小林節氏は「石川さんが書いた上申書の文字と真犯人が書いた脅迫状の筆跡は異なり、憲法上では明らかに無罪である。石川さんが無実の罪に陥れられたことからも分かるように、この事件は司法による人権侵害である。ここで自分が闘わなかったら、憲法学者がうそになる。全力で闘う」と決意を述べた。

また、主催者を代表し片岡明幸部落解放同盟中央本部副委員長から、

「この狭山闘争は今年で53年を迎え、第3次再審請求が申し立てられてから10年を迎えた。現在までに185点の証拠開示がなされ、弁護団は182点の証拠を裁判所に提出している。その証拠の中には石川さんの無実を十分説明できる証拠が多く存在する。特に狭山警察署署長に宛てた上申書、犯行に使われた手拭い、取り調べ時の録音テープが三大新証拠であり、この中の一つの証拠だけでも石川さんの無実を十分証明できるものだ。

特に録音テープについては、刑事の取り調べの様子がはっきり残っており、その中で分かることは、石川さんが事件について何も知らないということである。犯人ではないということだ。

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石川さんの支援の輪は司法を動かす

昨年1月に東京高検の証拠物のリストが開示されたが、しかし検察側が隠している証拠はまだたくさんあるはずだ。埼玉県警や、さいたま地検の持っている証拠物一覧についても、徹底した開示を求めていく所存である。

いよいよ狭山闘争は大きな正念場を迎えた。弁護団の活躍により石川さんの無実、警察や検察の証拠の捏造がはっきりしてきた。勝利の確信を持って、この闘争を全力でともに闘おう」と基調報告がなされた。

この日は再審無罪となった足利事件の菅家利和さんや布川事件の桜井昌司さん、再審開始が決まった袴田事件の袴田巖さんの姉秀子さんもかけつけ、力強い連帯アピールが行われた。

その後市民の会アピール、集会アピールへと続き、鎌田慧狭山事件の再審を求める市民の会事務局長より今集会におけるまとめがあった。「この事件は司法の誤りを象徴的に示している。皆様が長いこの闘争を53年間も闘い抜いてきたわけで、これからも確信を込めて闘い続け、ともに輪を広げていきたい。証拠の全面開示、事実調べ、証人尋問が一日も早く行われるように求め続け、冤罪のない日本社会の実現を目指そう」と呼びかけ総括した。

最後に、坂本三郎部落解放同盟中央本部副委員長が「石川さんの見えない手錠を一日も早くはずすため再審開始を求めていこう」と参加者に呼びかけ、力強くアピールを行い、デモ行進へと続いた。

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石川さんとともにデモ行進

石川夫妻、部落解放同盟員を先頭に、「共闘」「各県連」「同宗連」「狭山住民の会」一丸となって隊列をなし、一同は日比谷公園を出発し、芝公園までデモ行進した。一日も早く再審を開始させるため東京高裁・東京高検に向けて事実調べと証拠開示を行うよう声を大にして道行く人たちに事件の真実と石川さんの無実を訴えた。

 

冤罪53年

石川さんの無実は、明らかになった数多くの証拠が示すとおり、誰の目から見ても一目瞭然であるのに、それをさせなくさせている現状がある。

その問題点として、検察が不見当として全証拠開示に応じない(証拠隠し)ことと、裁判所による事実調べが40年以上一度たりとも行われず、鑑定人尋問、証人尋問も行われていないことがある。本来証拠は全て開示されるべきであるのに、53年経った今もこれがなされていない。

 

請願署名はがき運動のご協力を

先般宗務所宛にお送りした東京高裁・東京高検宛ての請願署名はがきを十分に活用いただくよう改めてお願いしたい。東京高裁・東京高検に宛てた請願署名はがきは、証拠開示を公正公平にするためのものであり、私たちの人権や尊厳が守られるためには、常に司法制度そのものが問い糾されなければならない。

石川さんのみならず私たちも冤罪被害にあう可能性があり、これはわれわれ一人ひとりの問題である。そのことから分かるように、宗教者としては裁判所に対して速やかに事実調べ、鑑定人尋問、証人尋問を行うよう、検察に対しては全証拠開示を行うように、粘り強く求めていかなければならない。

この事件を一人でも多くの人たちに伝えていくことはもちろん、事実調べと全証拠開示を求めていく世論をさらに大きくするため、皆さま一人ひとりの署名が第3次再審の扉を開く大きな力となる。 

昨年10月の日比谷野音での再審を求める市民集会で「冤罪が晴れて自分の無実が明らかになれば、日本の司法の在り方も大きく変わっていく」との石川さんの訴えを今も深く受け止めている。「狭山」の闘いは、今まさしくこの時が正念場である。ともに石川さんを全力で支援し、事実調べと全証拠開示を勝ち取るまで力の限り闘い、再審を勝ち取ろう。

(人権擁護推進本部 記)