【人権フォーラム】宗門主催被差別戒名物故者諸精霊追善法要厳修

2016.01.15

11月16日、山形県鶴岡市善寳寺専門僧堂を会場に、曹洞宗被差別戒名物故者諸精霊追善法要が、釜田隆文宗務総長を導師に厳修された。     

この法要は、2008(平成20)年度から開催しており、今回で8回目となる。この度は東北管区役職員人権啓発研修会と併修で執り行われ、内局をはじめ、東北管区内宗議会議員、宗務所役職員、教化センター役職員、山形県第3宗務所管内教区長・青年会・青少年教化員・寺族会会長・婦人会会長、人権啓発相談員など多くの宗門関係者が参列した。さらに来賓として、部落解放同盟中央本部関係者にご臨席いただき、総勢130人での法要となった。

午後2時30分に打ち出し、地元の梅花流師範の「三宝御和讃」奉詠の中、釜田宗務総長が上殿し「供養のことば」を奉読した。続いて修証義を遶誦の後、参列者の焼香が行われ「追善供養御和讃」の奉詠、回向と続いた。

法要終了後の挨拶で釜田宗務総長は、参列者と会場主への謝意を述べ「差別戒名」改正の現状を報告。そして最後に「宗門は、主体的に部落差別をはじめとしたあらゆる差別の解消のために、これからも人権啓発の取り組みを推進していくことをお誓いし、挨拶とさせていただきます」と締めくくった。

続いて会場主の五十嵐卓三善寳寺専門僧堂堂長より挨拶があり「私たちは常に同じ目線を持って語り合う、そうした世界を築いて行きましょう。これが私たちに与えられた宗教者としての課題です」と述べられた。

さらに、来賓を代表して西島藤彦部落解放同盟中央本部書記長より「私たちの祖先が差別戒名を戒名として受け取りながら、お参りをしてきた歴史があります。死後の世界においても差別を受けていることが発覚し、私たちは強く憤りを持って、改正の取り組みを要請してまいりました。本日も法要を通して、宗務総長より改めてその決意がなされました。同時に、各寺院におかれましても総長の決意をしっかりと受け止めていただき、さらに未来へ継承されることをお願いいたします」との挨拶をいただき、その後来賓紹介が行われ散堂となった。

会場を移した後、「『同和対策審議会』答申50年、その意義と今後の課題」と題して、西島藤彦書記長の講演が行われた。

1951年、当時の京都市内の被差別部落の劣悪な実態をことさらに強調した「特殊部落」という小説が京都市職員によって書かれ、雑誌『オール・ロマンス』に掲載された。その内容は、被差別部落の実態をゆがめて興味本位に描いた差別小説であり、これに抗議する形で京都市に対し糾弾闘争を行ったことにより『同和対策審議会』が設立され、答申に繋がることとなった。その経緯について氏より説明がなされた。

「かつて京都市において、同じ行政のエリアでありながら被差別部落だけは住環境等の整備がされず、他の地域と比べ大きな格差が存在していました。これは差別であると私たちの先人たちが、京都市に対してその差別性を強く追求して闘ってまいりました。 

このことを契機に、大阪、奈良、滋賀におけるそれぞれの被差別部落に対しても、同じように差別行政が行われ、被差別部落を避けながら行政施策が展開されているという実態が明らかになったのです。そうした中で差別行政に対する、糾弾闘争というものが全国的に広がっていきました。それと同時にこういった実態をとらえて被差別部落の色々な闘争が新聞に掲載される動きも生まれました。同時に国会においても、基本的人権を憲法の大きな柱とする中で被差別部落を放置することは問題だという指摘が追求されてきたわけです。

メディアでのキャンペーン、国会での追及、このことを通して当時の政権は同和問題を解決する施策をしなければならないということで、1960年、当時の自民党、社会党、民社党、この三党の共同提案によって、これからの『同和問題』の解決に向けての審議会が設置されました。  

当時、私たちはこの動きを促進するため、九州から全国各地を回って要求運動を展開をしてまいりました。民間の大きな動きに応える形で審議会が審議を進め、やっと1965年8月に政府は『同和問題』のあり方を巡る答申を出しました。この答申が出て今年で50年を迎えます」   

部落差別の解消が「国民的な課題」であり、「国の責務である」という答申が出され、1969年から同和対策特別措置法が時限立法方式で制定されたことにより、国の予算をもって被差別部落に対し環境改善が行われ、何度かの期間延長の後、2002年まで続いた。しかし、法律が終了した現在も部落差別が行われている。また、被差別部落と一般地域との生活水準を比較すると、今だ格差が現存する。この実態に対し氏はこう語る。    

「政府が審議会を作って出した答申である以上、政府は約束を守らなければなりません。

2000年に人権教育啓発推進法ができ、北海道から沖縄まで、全国において取り組みができる訳ですが、この法律をしっかりと活用しなければなりらない。そして何よりも、差別そのものを禁止する法律を、この日本の中で作っていこうという動きも今、広がっているところであります。

法律を整備させながら、差別を克服する取り組みを、実践を通してしっかりと進めていかなければなりません。答申50年という節目を迎え、決意を新たにしております」

その後、人権擁護推進本部より宗門の現状と取り組みの報告がなされ、閉会となった。

(人権擁護推進本部記)

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