【International】僧堂掛搭僧海外研鑽を終えて

この度、令和6年9月1日から11月27日まで、北米のニューヨーク州とカリフォルニア州で約3ヵ月間研修をさせていただきました。研修はそのほとんどの期間がカリフォルニア州であった為、まずはカリフォルニア州内で巡った研修地についてご報告したいと思います。
最初に訪れたお寺はグリーンガルチファーム・蒼龍寺です。ここで印象的だったのは、本堂や茶室など日本式の建物と「グリーンガルチファーム」とその名にファームを冠するとおり大きな農場があることです。有機農法を学ぶのが目的でここに来る人もいます。そして徒歩15分でビーチに行ける、非常によい環境でした。
ここから同じく海外研鑽僧として大本山永平寺本山僧堂から来られた丹下達道師と合流して1ヵ月近くご一緒することになりました。丹下さんから学ぶことも多く、このことは私にとって非常に良い刺激と経験になりました。

次にサンフランシスコの街中、ジャパンタウンにある桑港寺で開創90周年記念法要の補佐をさせていただきました。法要の会場準備の手伝いおよび法要では、送迎と行茶浄人の配役をいただきました。この法要では首座法戦式も執り行われ、アメリカの法戦式を見る機会にも恵まれました。
その後、両大本山北米別院禅宗寺で現職研修会の会場づくりや開催中の食事準備を行いました。また、研修会のテーマが「僧堂修行」についてであったため、私も可睡斎専門僧堂での修行について、皆さんの前でスピーチを行う機会を頂戴し、現職研修会終了後も、禅宗寺で行われたハロウィンパーティと精進料理教室のお手伝いをさせていただきました。


その後、最後の約1ヵ月をソノママウンテン禅センター・現成寺で修行させていただきました。現成寺は少人数のとてもアットホームなお寺で、居心地のよい修行道場でした。クワング寂照老師は曹洞宗のルーツである日本との繋がりを大切に考えておられ、弟子でもある住職、クワング如是老師も大本山永平寺でご修行されました。そのためか、今回訪問したアメリカのお寺の中でも曹洞宗の行持を最も忠実に守っているお寺であると感じました。また、毎週火曜日に勉強会を開催したり、近所の大学生に定期的に坐禅を教えたり布教活動も積極的に行っていました。
さて、1ヵ寺だけですが、東海岸のお寺でも研鑽することができましたので、それについてご報告したいと思います。場所はニューヨーク州の禅マウンテンモナストリー・道真寺です。
道真寺は可睡斎専門僧堂の堂長、采川道昭老師が開創に関わったということで、非常に温かく迎えてくださいました。40年前に采川老師が作られた槌砧も応量器飯台で使われていて感慨深いものがございました。
道真寺は他の研修地のお寺よりもユニークなお寺でした。それは臨済宗と曹洞宗の両方の伝統を受け継いでいるお寺だからだと思います。開創者のローリー大道老師は、ニューヨークで臨済宗の中川宋淵老師および嶋野榮道老師、カリフォルニアで曹洞宗の前角博雄老師に師事されました。ですので、坐禅も対座坐禅と面壁坐禅を交互に行じ、公案に参じている修行者もおられました。独参にも皆熱心で希望者が先を争って列を作る様子に非常に驚きました。日本ではそんな光景はみたことがありませんでした。
また、修行プログラムの中にはヨガや気功を行うボディプラクティス、自由にアート作品を制作するアートプラクティスなどもありました。どれも興味深くて夢中で一行三昧で取り組めました。私はパステル画と水彩画を好んで取り組みました。
道真寺で一番印象に残ったのは、皆さんの前で自己紹介をしたときのことでした。拙い英語でなぜ僧侶になったのか―私はかつてワーカホリックが原因で心身ともに病気になってしまった経緯があり、そこから救われたのは瞑想や坐禅との出会いでした―自分の過去について、一生懸命お話ししました。皆さん興味深く話を聞いてくれて、質問もたくさん受けました。話し終わったあとに「すごくよかったよ!」とか「Myoshinの話で奮起した。ありがとう!」と駆け寄って感想を伝えてくれる方々もいました。中には私に「感謝の気持ちです」とお布施を渡してくださる方もいらっしゃいました。また、一人の僧侶の方から「あなたは存在感だけでまわりにいい影響を与えている」と言われたのは嬉しかったです。
日本の僧堂は、資格を取るために来ているという方が多くいらっしゃいますが、アメリカでは瞑想から坐禅や仏教に関心を持ち、それについて学ぶために、または坐禅修行のために来ている人が大勢います。そして、かつての私のようにメンタルに不調をきたし、瞑想や坐禅と出会い、その後、縁あって僧侶となる人も大勢います。尼僧さんもたくさんいます。日本では尼僧の私はマイノリティの一人ですが、アメリカでは自分と同じようなバックグラウンドの人がたくさんいて、先述のとおり私の経験を話すことで皆さんの役に立てたこと、感謝されたことで自分にも僧侶として役に立てるのではないか、できることがあるのではないか、そんな気持ちが強くなりました。
将来的には国内外を問わず、布教活動がしたいです。そのために国際布教師への道も視野に入れて今後も精進してまいります。この度はこのような貴重な機会を頂戴することができ、とても感謝しております。ありがとうございました。
可睡斎専門僧堂 竹内妙心