【人権フォーラム】2024年度管区内宗務所・教化センター役職員人権教育啓発研修会実施報告
今回の人権フォーラムでは各地で行われている研修会についてご報告いたします。2025年度をもって管区内宗務所・教化センター役職員人権教育啓発研修会は終了となり、2026年度より、各宗務所における自主的な人権教育啓発研修が始まります。
また、この企画は宗務所人権擁護推進委員を委嘱されている方々が、宗務所や教区が主催する人権学習をはじめ、さまざまなカリキュラム作成の情報共有の機会にしていただければ幸いです。
2024年5月(関東管区)
長野県上田市内にて【部落差別】をテーマに行われた。
講義①「宗教と部落差別問題身元調査その事態を問う」では、1996年に人権学習資料として作成された映像を視聴し、現在でも通じる問題点について人権擁護推進本部員が解説した。
講義②「宗教と差別問題『差別戒名』について考える」では、1998年に作成された映像を視聴し、性自認と生活上の性別が違う方への授戒の問題など、現代に通じる課題として本部員から解説があった。
現地学習として、上田市丸子地区内の差別戒名墓石前で被差別戒名物故者諸精霊慰霊法要を行った。
現在は、多様な人権課題が叫ばれる時代であるが、宗門においては部落差別問題から普遍的な差別の理解を促されてきたといえる。今一度、その起点を確認することができた研修であった。
2024年7月(東北管区)
山形県米沢市内を会場に、【災害と人権、緩和ケアと人権】をテーマに行われた。
講義①では、講師として避難者支援センターおいで・上野寛氏は、2011年3月の東日本大震災で被災し、現在は避難者支援活動を続け、当時からの体験談と現在の活動状況や被災者の現状についてお話をうかがった。
講義②では、2012年に人権学習資料として作成された「向きあう 伝える 支えあう~生と死を見つめて~」の一部を視聴し、講師に一般社団法人 My wells ケア工房の神谷浩平氏を迎え、緩和ケアの目的や具体的活動内容についてのお話をうかがった。また、臨床宗教師としても活動する山形県第二宗務所の妻鳥紘明人権擁護推進主事とともに、同じチームの一員として活動しているとのことであった。
生と死は切っても切り離せるものではない。緩和ケアとは「医者からさじを投げられて言い渡された治療」ではなく、病気による痛みや不安、怖れに向き合うとき本人や家族を支えるケアであり、医療者だけがその担い手ではない。ともに支え生命の時間をはぐくむ者の一人として、私たち宗教に携わる者ができることもあるのではないかと考えさせられる研修であった。
2024年11月(北海道管区)
長野県上田市にある丸子解放センターを会場に、【差別戒名】をテーマに行われた。
講義①では、講師に部落解放同盟長野県連合会の深井計美顧問を迎え、差別戒名の歴史的な流れを解説していただいたのちに、縁の深い「彩の森霊園」、差別戒名墓石が合祀されている寺院において被差別戒名物故者諸精霊慰霊法要を行った。
講義②では、NPO法人・人権センターながの高橋典男事務局長を講師として、ご自身が部落差別と向き合うことになったきっかけや、活動をしていく中で出会った、今もなお差別に苦しむ方々がいるという厳しい現実についてお話しいただいた。
東北地方以北には、大規模被差別部落が存在しておらず、実際の生活の中で部落差別問題に出会う機会が少ないという意見が聞かれることも多い。しかしながら、部落差別問題は戒名授与の問題に直接関わってくる。特に、差別戒名を付けられた方々へ供養の誠を捧げる機会は、重要なものだと感じた研修であった。
2024年12月(四国管区)
香川県高松市において【ハンセン病】をテーマに行われた。
現地学習として、高松市庵治町を大島にある国立療養所大島青松園の社会交流会館を見学、療養所内を見学しながら、納骨堂にて慰霊法要を行った。
講義①では、大島青松園自治会・森和男会長より当時の差別的な待遇や、時代とともに移り変わっていった療養所の様子などをお話しいただいた。
講義②では、大島青松園の入所者であった詩人の塔和子さんのドキュメンタリー映画「風の舞」を視聴した。
ハンセン病元患者の方々は、高齢化が進んでおり、入居者が居られなくなった後の療養所の継承について様々な検討がなされているとのことだった。曹洞宗の歴史においても、ハンセン病に対する深刻な差別があり、差別や偏見を助長した。2001年に曹洞宗宗議会において「ハンセン病患者及び元患者とその家族及び親族に対する謝罪と人権回復のための啓発活動に尽力することの決議文」が採択され、その第一歩として全国の国立療養所を訪園し、懺悔と謝罪の法要を勤めさせていただいている。
かつて、新型コロナウイルス感染症流行差別事象や風評被害が惹起したように「病」による人権侵害がいつまた発生するかも分からないため、学習の継続が必要なテーマであろう。
以上、本年度に各管区で行われた研修会をご紹介いたしました。次年度は、東海管区・近畿管区・中国管区・九州管区・北信越管区を予定しています。
人権擁護推進本部 記