【人権フォーラム】これからの教区人権学習について
○宗門で行われている人権学習
宗門では現在様々な人権学習会が催されています。宗制に定められる学習については、本山僧堂・専門僧堂においての人権学習があり、首先住職研修会や現職研修会など、義務づけられる研修においても、日程に組み込まれる場合が多くあります。また布教師、梅花流師範など各種養成所や宗議会においても人権学習の時間が確保されております。
このように、宗門において人権学習の機会は数多く、宗門関係者の皆さまの大きなご協力があってこそ、現在の環境が整ったものと思慮するところであります。
しかしながら、それぞれの学習が何を目的にしているのか、学習に参加される方に何を得て欲しいのかなど、主催者によって様々な希望があり、全体として明瞭な学習とはいえない状況があります。そこで、人権擁護推進本部から要請する教区人権学習の目的を、各教区及び各宗務所における諸課題を模索するためのものにしていきたいと考えております。
○教区人権学習の特徴
様々に行われている人権学習ですが、対象が限定されることがあります。例えば、宗務所や管区教化センターの役職員、55歳以下の教師、住職・副住職、寺族などです。
しかし、教区人権学習会は世代や役職を問いません。また、人権本部からは教区人権学習要項等にてテーマをお伝えしておりますが、実際にはそのテーマ以外の学習も行われています。これらは、他の人権学習には無い特徴と言えます。
言い換えると、各地域で身近な方々とともに学ぶ時間が教区人権学習であるともいえます。そうであるならば、身近な問題を共有する時間としても、活用していただきたいのです。
○教区人権学習の始まり
教区長の皆さまに人権学習開催の依頼を初めて行ったのは2000(平成12)年でありました。以来、四半世紀近くもの間、教区人権学習の開催にご協力いただいております。誠にありがとうございます。
これまでは人権本部においてテーマを策定し、本部が作成した映像や冊子などに基づいた人権学習の実施を依頼してまいりました。この手法の利点は、全国の曹洞宗寺院において共通する問題を周知することができること、また、テーマとなる人権課題について、曹洞宗としての見解を共有していくことが可能となる点でした。
○教区人権学習の反省点
しかしながら、近年の教区人権学習では、ある一つの正解がないテーマに対し、宗門人として、一個人としてどのように対応していくのかを考えていただく傾向が強くなっています。これは、人権課題の多様化や課題解決の道筋が地域や各個人によって変わってきたことが主な要因です。
例えば、本年度のテーマである「人権と災害」については、被災したことのある地域とそうではない地域によって意識に大幅な違いがありました。被災した地域の方々からすればこのテーマは既知の内容であり、被災者の人権を考えることは当然のことでした。
つまり、地域の状況によって必要な学習や情報は全く違うはずなのですが、全国共通のテーマにすることで、その違いを無視してしまうことにもつながります。
○人権学習に必要なことを
実は、こういった問題は、行政においても発生しています。端的にいえば、日本政府が策定した方針や計画を、地方自治体が実行するという手法が持つ問題です。こうした手法は一定のレベルまでは効果を発揮しますが、地方自治体の個性を無視することに繋がってしまいます。
例えば、2000(平成12)年に施行された「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」では、地方公共団体の責務として人権教育・啓発に関する施策の策定を定めています。法律なので責務という言葉になっていますが、ある意味で国が勝手に決めてしまうことを止め、地方自治体の意志を尊重するための法律ともいえるでしょう。
上意下達式の手法は早く最大多数に情報を伝えることができますが、必ず個々人を無視することにもなります。特に人権学習というものの性格上、誰かを無視して強行し続けることは致命的な欠陥となりかねません。
○アンケートにご協力を
そこで、2025(令和7)年度より、その地域の実情や、全国に共有すべき人権課題を模索するため、詳細なアンケートを実施することといたしました。
これまでご協力いただいていた教区人権学習実施報告書の集計によれば、全教区の開催率が7割前後となっておりますが、地域によって割合が5割程度となる場合がありました。今後の学習に皆さまの意見を反映させるためにも、教区人権学習の開催に皆さまのお力を賜れば幸いです。
教区長の皆さまには、毎年お送りしている教区人権学習要項で詳細をお伝えし、『曹洞宗報』誌面上でもお知らせいたします。初めての試みとはなりますが、何卒ご協力をお願いいたします。
人権擁護推進本部 記