【人権フォーラム】『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議第44回総会報告
4月17日(水)『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議(以下、「同宗連」)の第四四回総会が、立正佼成会大阪普門館(大阪府)を会場に開催されました。曹洞宗は、昨年第43回総会にて議長就任が承認され、現在第22期「同宗連」議長教団(事務局) として2年目を迎えており、「同宗連」の運営の中心として、さまざまな活動に携わっております。
総会当日は加盟62教団から72名(内委任状提出25教団)、来賓3団体から4名、協賛3団体から6名、そして都府県「同宗連」8団体から9名、合計91名の出席がありました。
最初に、出席者全員で黙祷を行い、部落差別をはじめとするあらゆる差別の解消、また長期化しているロシアによるウクライナ侵攻、ガザ地区におけるイスラエル、パレスチナの武力衝突の一刻も早い終結と、令和六年能登半島沖地震において尊い命を失った方々への哀悼と被災地の早期復興を祈念いたしました。
続いて、開会にあたり「同宗連」議長である戸田光隆曹洞宗人権擁護推進本部次長が「私たちの身のまわりにおきるさまざまな天災や人災、そのさまざまな災いの中に、人権がどのように守られていかなければならないか。そして私たち宗教に携わるものは、そこにどのように心を寄せ、寄り添い続けていかなければならないのか。さまざまな出来事を通し痛感しているところであります。私たちの連帯がさらに世の安寧に結びついていけるよう、それぞれの英知を結集していただき、本日の総会を無事に遂行できますようお願い申しあげます」と開会の辞を述べました。
次に、西島藤彦部落解放同盟中央本部中央執行委員長より来賓挨拶があり、その中では、近年のネット社会における差別情報の氾濫、それに対する規制や差別を受けた方を救済する法律の整備や制定への働きかけ、さらに「狭山事件」の再審に向けての取り組みについても触れられ、引き続き「同宗連」に携わる皆さまのご支援をお願いしたい旨が述べられました。
続いて、伊藤忠茂同和問題にとりくむ大阪宗教者連絡会議議長の来賓挨拶、会場提供教団である、猿樂年央立正佼成会理事(西日本教区長・大阪教会長)よりご挨拶をいただきました。
その後、会場を調え議事へと進み、2023年度「同宗連」事業報告、一般会計決算、特別会計「記念事業費」決算、さらに2024年度「同宗連」事業計画(案)、一般会計予算(案)、特別会計「記念事業費」予算(案)の審議・採決が行われ、いずれも賛成全員により、承認がなされました。
議事終了後は、6つの連絡会に分かれ、各連絡会ごとに協議が行われ、本年度の連絡会の計画など、活発に協議している様子がうかがわれました。
連絡会協議後、休憩を挟んで出口真紀子上智大学外国語学部英語学科教授により、「マジョリティの特権を可視化する~自分事として差別をとらえるために~」をテーマとし、記念講演が行われました。
講演では、マジョリティの特権を「透明な自動ドア」として表し、自動ドアはセンサーで人を検知して開くが、今の社会はマジョリティに対してドアが開くような構造になっている。目的地に向かって歩くとき、マジョリティ性が多い人は透明なドアが自動的に次々と開くので、どんどん前に進むことができる。それは、たまたま権力に近い属性を持っているから「センサーが自動ドアを開けてくれる」という恩恵を受けられているが、ドアがあることにも気づかず、「ここまで到達することができたのは、自分の努力の結果である」と捉えてしまう。一方、マイノリティ性が多い人の場合は自動ドアが開かず、努力してもなかなか前に進めない。ドアを自力でこじ開けなければならないなど、負荷がかかるため、センサーが不公平に働く社会構造に気づく。つまり、行く先を難なく進めるかどうかは、その人の努力だけではなく、構造に由来するが、ずっとマジョリティ側にいるとその構造に気づかない。この状況を変えるためには、権力を持っている側が、自分のマジョリティ性を自覚し、自分がマジョリティの特権を持っていることや構造的な差別があることに気づき、不条理な社会構造を変革する力になることが肝要となると述べられました。オンラインによるご出講となりましたが、会場では大型スクリーンに視線を向け、真剣に講師の話に耳を傾ける参加者の様子が見て取れ、また講演途中には、実際にマジョリティの優位性を実感するためのアクティビティが設けられ、リラックスし楽しみながら学ぶ様子もうかがえ、記念講演にふさわしい有意義で貴重な時間となりました。
記念講演終了後、山田歌「同宗連」副議長による閉会挨拶があり、最後に改めて、黙祷を捧げ、第44回「同宗連」総会の全日程を終了いたしました。
この総会をもって、曹洞宗は「同宗連」議長教団としての任期2年の内、折り返し地点を過ぎました。より一層、関係各諸団体との連帯を深め部落差別をはじめとする一切の差別解消に向け、ともに歩みを進めてまいります。
人権擁護推進本部 記