【International】僧堂掛搭僧海外研鑽
曹洞宗の本山僧堂、専門僧堂及び専門尼僧堂では安居者を対象にした「僧堂掛搭僧海外研鑽」という、独自の教育プログラムを行っています。各僧堂は、行学の一環として当該僧堂に在籍する掛搭僧を派遣し、その受け入れ先である寺院や禅センター及び国際布教総監部との協議に基づき一定期間の研修を行うものです。
言語も文化も異なる海外において、同じ曹洞禅を志す仲間と過ごす日々は、日本と同じ行持であっても様々な気づきを得ることができます。海外での研鑽を終えた掛搭僧は後に各僧堂に戻り、現地での経験からその後の安居生活をさらに充実させ、他の安居者への刺激になることが期待されます。
また、滞在先である寺院・禅センターにとっても日本の僧堂で実際に安居している僧侶が滞在することは、良い刺激・経験になっているという報告をも受けております。これまで男女国籍問わず、60人以上がこの制度を利用し、その中には現地での経験を活かし、国際布教に関わる道に進んだ方も多数輩出しております。
今般、大本山永平寺に在籍する白田恭成師が海外研鑽を終えて帰国されましたので、報告を掲載いたします。
* * * * * * * * * * * * * * * *
この度、令和5年11月6日から令和6年1月31日までの約3ヵ月間、北アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコにある桑港寺、サンフランシスコシティ禅センター発心寺、グリーンガルチファーム蒼龍寺、ロサンゼルスの曹禅寺で研修の機会をいただきました。日本から出たことの無い自分にとって、言語や生活の上での不安はありましたが、終わってみればアメリカでの研修はとても有意義で、今後の自分の修行生活に刺激を与えてくれた素晴らしい時間でした。
今回の報告ではサンフランシスコにある2つの禅センター(発心寺と蒼龍寺)での経験を紹介いたします。禅センターには性別や年齢、髪型服装などに関わらず、仏教や坐禅に興味を持った方が集まって共同生活をしています。永平寺の生活とは多少の違いはあれど、朝早くから坐禅をし、皆でお経を読み、応量器を使って食事をいただくなど、基本的には永平寺と同じような一日の流れでした。
今回私は、皆の食事を用意する典座寮を経験させていただきました。訪れた禅センターの典座寮では料理を始める前に、道元禅師が書かれた『典座教訓』を皆で読む時間を設けていました。料理をする際はなるべく食材を粗末にしない、できる限り活かす工夫が見られたり、食材を切り込む際や調理をする際には食べる相手のことを考えて調理をしたりと、典座寮で守るべきことを実践している姿を見て、海を越えて道元禅師の教えが伝わっていることに感動しました。
禅センターに来られる方は、僧侶の資格を得るために来ているわけではありません。皆さん仏教に興味があって、坐禅に興味があって、自分の意思で来られています。そのような方々と共に坐禅をし、仏道にのっとった生活を一緒に目指して行うことは自分にとって非常に励みになりました。
一方で、私自身が禅センターの皆さんに何か影響を与えられていたかどうかは正直わかりません。合掌や日常生活すべての動きをとにかく丁寧にするよう意識したり、履き物を常にきれいに並べたりと、ただいつも永平寺で言われているようなことをとにかく丁寧に行いました。私がアメリカの皆さまの熱心な坐禅に対する取り組みから励まされたように、もし何か自分の行いから、アメリカの方を励ますことができたのであれば、それはとてもうれしく思います。お互いに影響を与えて励まし合いながら生きていく、修行していく、今後の永平寺での修行生活もその姿勢を決して忘れてはならないと強く感じることができました。
今回アメリカの禅センターでの生活を通して、永平寺に居るだけでは気が付くことのできなかった永平寺の素晴らしさも再認識することができました。このような貴重な経験を積ませていただいたことに心から感謝し、これからも日々精進してまいります。
大本山永平寺安居 白田恭成 記