梅花流詠讃歌【諸行無常のひびき】⑰

2024.05.01

今日きょういのちよろこびつ まことの行持くらし通達つらぬきて
ほとけふか御恩みめぐみに むくまつるぞたのしけれ

修証義御和讃しゅしょうぎごわさん」四番の歌詞です。今日ある命の尊さと、み仏との出会いの喜びと報恩感謝の思いが詠われています。 先日、角川書店の短歌総合誌『短歌』が創刊七十年を迎え、その特集として「70歳の自分」という企画が組まれました。70歳を超えた人は、当時のことを思い出し、今70歳の人は今の自分を、その年齢に達していない人は、70歳の自分を想像して、自作の短歌作品と、それにまつわるエッセイを添えるというものでした。

現在私は65歳なので、まだ5年先の話ですが、どうしてもその姿を思い描くことが出来ませんでした。以前、連載するなかで自分の病気に触れましたが、それをもう少し詳しく述べると次のような内容になります。

私は2年半前に肺に病気が見つかり、早く手を打たなければ大変なことになるという医師の言葉に従って治療を開始しました。初めは点滴による治療で、3週間に一度、病院で投薬を受けるものでしたが、投薬によって生じる副作用はとても辛く、倦怠感や皮膚の炎症、吐き気などの症状が出ました。副作用に苦しみながら治療を受けたのですが、一向にしるしが見えず、そこで病根を取り除く手術を受けることになりました。

幸い自分の希望する病院で手術を受けることが出来たのですが、退院する時、担当医に「5年後の生存率は良くて4割」と言われました。自分でも薄々感じていましたが、その言葉はとても衝撃的でした。

運よく5年後を迎えたとしても、その時私は68歳です。今の目標は68歳を迎えることであり、70歳は、無事に5年を経過した後の新たな目標と言っていいでしょう。今は幸運な4割に入ることを信じて生活していますが、自分の望みどおりになるとは限りません。み仏との出会いに感謝し、これまで以上に、生きることに貪欲な日々を送っていきたいと思っています。

秋田県禅林寺 住職 山中律雄