【International】カナダでの国際布教と今後の可能性

2024.03.08

北アメリカ国際布教総監部の管轄地域は、宗制でカナダ以南の北アメリカ大陸・コスタリカ共和国より北部中央アメリカ諸国と定められています。つまり、アメリカ本土だけでなく、カナダやメキシコに加えて、グアテマラやエルサルバドルといった中米諸国、さらにはキューバやドミニカ共和国といったカリブ海諸国も含まれており、広域にわたります。

しかしながら、200名以上いる総監部に僧籍のある宗侶の多くは、アメリカ本土に居を構えています。また、国際布教師として赴任している日本に僧籍のある宗侶もアメリカ本土にいるのが実情です。

現在、アメリカ本土以外で主に活動する北アメリカ国際布教師は、メキシコ合衆国の首都メキシコシティの特別寺院「センタロ禅・デ・メヒコ・法岳寺」のサンダーソン徹心師、そして、カナダでは「禅ノバスコシア」のフランズ幸雲師の2名のみとなっています。

この度は、この場をお借りしてカナダの国際布教について記します。

禅ノバスコシアはカナダの最大都市トロント、首都オタワなどからもさらに東に位置するノバスコシア州の州都、ハリファックスに所在しています。

国際布教師のフランズ幸雲師は英語教師として熊本県に赴任し、得度を受けた後、愛媛県の瑞應寺専門僧堂に安居。その後、アラスカ州のアンカレッジ禅コミュニティを経てカナダに移住し、禅ノバスコシアを立ち上げました。かねてより施設を借りながら活動していましたが、2022年に自宅の敷地内に禅堂を建立し、2023年には落慶法要を修行しています。

2023年10月には、総監部職員2名で日曜の午前中に坐禅会に参加しました。我々のために多くの参禅者がご参集してくださり、建立した禅堂では全員が入りきれないことから、地域の学校を借用して行われました。また、会場への参加の都合がつかなかった近隣の参禅者に加え、カナダ国内、さらには国外からのオンラインの参加者が見受けられました。午後からは禅堂を見学し、2021年の東京オリンピック・パラリンピックに併せて実施した「Zen Do Tokyo」の継続企画として、ニューヨークとロサンゼルスに引き続き、「Zen Do Canada」として、坐禅、SDGsに関連した法話の撮影を行いました。

モンテベロ曹禅寺の国際布教師である当総監部書記の横山行敬師は、北アメリカに赴任した当時から、家族の住むカナダでの国際布教の展開を目指しており、2022年にカナダ西部のアルバータ州に、現地の人々と新法人「ロッキーマウンテン禅コミュニティ」を立ち上げました。頻繁に現地に訪れての活動は難しいものの、毎年夏には現地に足を運んで摂心を行い、積極的に参加者とコミュニケーションをとっています。

またオンラインビデオ会議サービスのZoomなどを活用し、週5回程度のオンラインでの坐禅会、勉強会を実施しています。回を重ねるごとに参加人数も増え、カナダ西部における布教教化の中核になることが期待されます。これら禅ノバスコシア、ロッキーマウンテン禅コミュニティ以外にも、北アメリカやヨーロッパの国際布教師の徒弟が複数名カナダで自らのサンガを形成し、活動しているとの報告を受けております。また、曹洞宗に僧籍がないものの曹洞禅の法系をもつ僧侶は多数存在し、禅センターも各地に存在します。

ロッキーマウンテン禅コミュニティ

カナダはイギリス連邦加盟国ならびに英連邦王国の1つであり、国土はロシア連邦に次いで世界で2番目と広く、公用語も英語とフランス語の2言語となっています。同じ北アメリカと言えども、隣接するアメリカと文化も言語も異なります。

カナダにも、日系人のコミュニティの歴史があり、浄土真宗の寺院の存在が、約100年前より確認されていますが、曹洞禅の布教という観点からは、黎明期と言えるでしょう。とはいえ、国として多文化共生を謳い、カナダから日本へは英語講師が派遣され、日本からカナダへは留学やワーキングホリデーなどを行う人も多く、国際交流という観点から大きな可能性を感じます。

先の訪問においても、飛行機の遅延もあり総監部の所在するロサンゼルスからノバスコシアの空港までの移動には12時間以上を要し、改めて広大な管轄地域であることを実感しました。しかしながら、国際布教師が中心となり、只管打坐を実践するサンガが形成されています。

フランズ幸雲師は現在、特別寺院設立(寺号)承認申請の準備をしています。宗門の特別寺院となれば、カナダ初の結制安居が修行される予定です。結制安居を契機にカナダにおける国際布教もさらに広がりを見せることが期待されています。

総監部Facebook で公開中の「ZEN DO Canada」フランズ幸雲師国際布教師

北アメリカ国際布教総監部 記