【人権フォーラム】令和5年度第1回人権擁護推進主事研修会参加報告
9月13日から15日にかけて、令和5年度第1回人権擁護推進主事研修会が長野県上田市丸子地区と大本山永平寺を会場に開催されました。
丸子地区では、「差別戒名」墓石に関する現地研修が行われ、大本山永平寺では曹洞宗被差別戒名物故者追善供養法会に参列、その後、大講堂にて部落解放同盟中央本部、西島藤彦中央執行委員長と「反差別人権研究所みえ」の松村元樹常務理事より講演をいただきました。
研修会の日程中、人権教育啓発相談員を助言者として班別会を行い、互いの意見を交換しました。
今回は、講座に参加した2名の人権擁護推進主事の参加報告を寄稿いただきました。
研修会を終えて
広島県宗務所 人権擁護推進主事 村田昭元
9月13日から15日にかけて行われた研修会ですが、初日は長野県上田市において、差別戒名に関する現地学習でした。宗侶として学習したことがある問題ですが、講師の方から発せられる言葉の熱量に圧倒され、字面だけでは伝わらないものがあり、当事者の思いが強く心に響きました。対面して生の声を聞くことがどれだけ大事かが分かり、この問題に対してもっといろんな方の話をうかがい、歴史的背景や被差別部落の現状を知りたいと思いました。
ただし、この思いも場合によっては差別的な状況が生まれかねないことがあることを、翌日の講演で学ぶこととなりました。
また、夜に行われた班別会でも話題になりましたが、「差別戒名」と言われる中には、「本当に差別的意図があったのか」と疑問に思うものもありました。この件に関しては、人権教育啓発相談員より、「差別戒名」のとらえ方について補足説明をいただきました。今後、社会情勢や価値観の変容によって戒名の考え方が変わっていくかもしれないことを含め、自身が授ける戒名も、差別的意図がないことは当然であり、永く安心して手を合わせていただけるよう、より一層の責任を持って考えていかなければならないと思いました。
2日目は、大本山永平寺での「被差別戒名物故者追善供養法会」に随喜し、前日現地学習にてお参りした御霊への思いを重ね、この問題が無事解消に導かれることを祈りながらご焼香させていただきました。
法要後の講演では、「無関心でいられても無関係ではいられない人権・部落差別」と題し、お話しいただきました。演題のとおり、決して自分と無関係であると言えないことばかりの内容で、あらためて人権問題に対する意識を高めていく必要があると感じました。
その中で、部落問題等の日常的差別のひとつとして、「被差別の側に差別の現状の説明を求める会話」を挙げられました。差別解消のための学習であっても、当事者が矢面に立ち話すことが不快だと感じる場合、対話を求めることは差別行為になりうるということも気づかされ、前日に感じた私の思いも、十分な配慮を欠かさないことが必要であることが確認できました。
最終日は、班別会ならびに総括という日程でした。いろんな意見をうかがい、差別問題も善悪の二分した考えだけにとどまらないものだとあらためて感じました。
意見交換を重ねることで各々考え方を見直し是正していく、人権問題に向き合うということは、その繰り返しが大切なのだと思いました。
人権に対する今時点での自身の考え方とのすり合わせができて、非常に実りある研修会でした。
全国人権啓発研修会に参加して
福島県宗務所 人権擁護推進主事 吉岡統親
この度の研修会では長野県上田市の被差別戒名の墓石を供養し、大本山永平寺に於いて御親修物故者慰霊法要に随喜させていただくとともに講習を受けました。
私の日々の暮らしには被差別部落が身近なところに見えづらいのですが、しかし、そうであるからこそ当事者意識を高めると同時に被差別部落問題への学びを深める必要性は大きいと感じました。
研修で初めて知る知識は多々ありましたが、私にとってなにより印象的だったのは、差別にさらされた、私と同世代の講師の生の体験談であったり、懇意な友人が受けた差別を適切に聞くことができなかったのでは、と相談員から語られた後悔の念など、自分の感覚では考えられないような差別がリアルタイムで生きた話として語られたことでした。
私が籍を置く福島県は、あの震災以降風評差別にさらされているけれども、遠い場所のことと考えていれば見えてこないことがたくさんあると思います。しかしこれは部落差別に無知である自分をそっくりそのまま反転させて考えれば、同じことが自分の立ち位置といえようと思います。
差別は無知から始まります。聞くに「差別戒名」は昭和初期まで使われていたといいますが、明治に発せられた四民平等以降、等しく人権が守られてきたというのは歴史の表層でしかなく、戊辰後も封建制度をひきずったままに歩んできた社会の真相をあらわす確固たる証であるように思います。福沢諭吉の書には「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり」とありますが、この「いへり」の部分にこそ当時の現実が描かれており、現代の私たちは歴史知見を深め、想像力を働かせることによってはじめて見えてくるのがこの封建的差別ではないでしょうか。
明白ながら人の評価に過去の封建的思想を持ち込んではならないし、そのことで生まれながらに差別される人がいてはなりません。しかし、部落差別は過去だけのものではなく現在に至るまで続いていることを、戒名の刻まれた石塔や、これまで悔しい思いをしてきた語り手から今回改めて教えていただきました。
肌身に感じたその熱が、差別をただす原動力であろうと思うし、人間として大切にしなければならないものを違えぬように、今後も学んでいきたいと思います。
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令和5年度第2回人権擁護推進主事研修会は、来年3月に曹洞宗宗務庁を会場に開催を予定しています。
(人権擁護推進本部記)