「ジャパン・ハウス・ロサンゼルス」精進料理セッション報告

2023.10.05

令和5年7月22日と9月2日に、ロサンゼルス市ハリウッドのジャパン・ハウス・ロサンゼルスにて、精進料理をテーマにしたセッション「Foodas Practice(日本語訳:修行としての食事)」が行われ、管内国際布教師が中心となって講師を務めました。

ジャパン・ハウス・ロサンゼルスは、外務省による日本のアート・デザイン・テクノロジーなどを紹介する戦略的対外発信の強化に向けた取り組みの一環として、平成30年8月に全館開館し、アカデミー賞の授賞式会場として世界的にも知られるドルビーシアターがある複合施設に所在し、現地の人々だけでなく、世界各地からの観光客が来館しています。

令和2年2月にも精進料理のセッションが行われ、参加者から好評だったことから、継続して開催することが予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により延期され、この度再び開催の運びとなりました。内容は、前回同様、精進料理の作り方の料理教室や、精進料理をただ食す催しではなく、精進料理を通じて日本の食文化、精神性を紹介しました。

両日とも、午前と午後の部の計2回実施し、いずれも30名の定員が受付開始日に埋まり、延べ数百名のキャンセル待ちが出るなど、日本の食文化や精進料理への関心度の高さがうかがえました。

講師の小島秀明両大本山北米別院国際布教主任

当日のセッションは、メインの講師となる両大本山北米別院禅宗寺の小島秀明国際布教主任が、曹洞宗における食事の大切さを、僧堂での修行の様子の映像などを用いて説明いたしました。また、「いただきます」の言葉の意味などが、日本の精神性に関連付けて紹介されました。その後、前日から準備した一汁一菜の如法の精進料理を参加者へ提供いたしました。

参加者は初めての応量器の作法に戸惑いながらも、小島主任の所作を見ながら、匙と箸を使って心静かに味わっていました。

食前には、英訳された「五観之偈」を全員でお唱えし、食後にはお茶とお漬物の沢庵で器を洗いました。「普段、私たちは使い終わった食器を洗う際、必要以上の水を使ってしまいがちです。丁寧に洗うことで器一杯のお湯で複数の食器をきれいにすることが出来るのです」という説明を聞き、丁寧に食器を洗っている参加者の様子が印象的でした。

質疑応答では、提供した料理のレシピや精進料理全般のこと、僧堂での修行生活についてなど、多くの質問が寄せられ、一つ一つ丁寧に回答し、盛会裏にセッションを終了いたしました。

終了後のアンケートでは、九割以上の方々に「参加してとてもよかった」との回答が得られました。

前回、令和2年2月の参加者は全員現地アメリカ人でしたが、今回は日本人・日系人も参加されていました。7月22日には、在ロサンゼルス日本国総領事館の曽根総領事、在ロサンゼルス韓国総領事館のキム総領事なども参加され、日本とアメリカ合衆国だけでなく、他諸国との国際交流にセッションを通じて寄与できました。

ZEN・坐禅への関心が北アメリカにおいて高いことは、日本の皆さまもご承知とは思いますが、和食・精進料理についても大変高い人気があります。しかし、これは北アメリカに限ったことではなく、世界的なムーブメントと言えるでしょう。こと「和食」に限って言えば、2013年にユネスコ無形文化遺産に登録され、日本食料理店は世界各地で見かけるようになりました。

ジャパン・ハウスはサンパウロとロンドンにも設置されています。奇しくもサンパウロには南アメリカ国際布教総監部が所在し、ロンドンもヨーロッパ国際布教総監部の管内であることから、当総監部とロサンゼルスのジャパン・ハウスで培ったノウハウを、南アメリカとヨーロッパの総監部にも共有し、両都市でも同様の催しができましたら幸いです。

しかしながら、このような催しへの参加は、当総監部内だけで完結するものではなく、曹洞宗国際センター、管内国際布教師・宗侶、そして寺院・禅センターの協力無くして実現いたしません。今回も、前日の調理のための台所使用、調理器具そして応量器一式も禅宗寺よりお借りしました。また、坐禅会メンバーにも前日と当日に様々なご協力をいただきました。

北アメリカには、各都市に日系コミュニティ、日本庭園、そしてジャパン・ハウスのような施設が多数存在いたします。当総監部としては、こういった精進料理や日本文化をきっかけに曹洞禅に触れていただく催しを、関係各所と連携して行うことで、当地における曹洞禅の敷衍に寄与してまいります。

北アメリカ国際布教総監部 記