【人権フォーラム】「狭山事件」の再審を求める市民集会参加報告

2023.07.20

2023年5月23日、東京都・日比谷野外音楽堂で狭山事件の再審を求める市民集会が開催されました。当日は雨天の中、「同宗連」(『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議)ほか、支援する約1,200人が参加しました。

「狭山事件」は、1963(昭和38)年5月1日、埼玉県狭山市で女子高校生が行方不明になり、身代金を要求する脅迫状が届けられ、警察は張り込みを行いましたが、犯人を取り逃がし、3日後、その女子高校生が遺体となって発見された殺人事件です。5月23日、被差別部落出身の石川一雄さんが窃盗などの別件で逮捕されました。石川さんは、窃盗については認めましたが、本件については否認を続け、1ヵ月後に「自白」をします。この「自白」については、あまりにも客観的事実と一致しない不自然な点が多く、「自白」までの経過に、取り調べ方法や長期間逮捕・勾留などの問題が指摘されています。石川さんは、第一審ではこの「自白」を認めましたが、第二審以降はこの「自白」を撤回し、その後も一貫して無実を主張し続けています。

壇上には約51万筆の「狭山事件の第三次再審において事実調べ(鑑定人尋問・鑑定)をおこなうことを求める署名」が入ったダンボールが積み上げられ、集会は始まりました。

集会は西島藤彦・部落解放同盟中央本部中央執行委員長の開会挨拶、各政党挨拶に引き続き、石川一雄さん・早智子さんの集会アピールへと続きました。

石川一雄さん・早智子さんの集会アピール

石川一雄さん・早智子さんの集会アピール
石川一雄さん
 今日はあいにくの雨になってしまいました。皆さまに雨の中来ていただいたことに大変申し訳なく思っています。雨の中ではありますが、我慢してデモ行進まで闘っていきたいと思います。60年を振り返り、このような歌を読ませていただきました。

 「吾が無実 叫び続けて60年 動かせ司法 満座の声で」

私はこの60年、皆さんに涙を見せてはいけないと、いまも元気でおります。勝利するまでは元気で闘っていきます。皆さん、冤罪が晴れるまで応援をよろしくお願いいたします。

石川早智子さん
 今日は不当に逮捕されて60年目の5月23日です。石川一雄は人生のほとんどを冤罪を晴らすために闘い続けています。60年目を迎え、狭山再審の闘いは大きく動いています。鑑定人尋問を求める署名活動は50万筆を超えました。皆さまの大きな力のおかげです。石川一雄は84歳ですが、元気に闘いを続けています。再審の闘いは最終段階にきています。鑑定人尋問、再審開始に向けて、皆さまのさらなるお力添えをお願いいたします。

続いて、中北龍太郎・狭山事件再審弁護団事務局長より弁護団報告が述べられました。

弁護団報告を行う中北龍太郎氏

弁護団報告(要旨)
 今年は不当逮捕から60年目の節目の年です。この節目の年に鑑定人の証人尋問、万年筆インクの鑑定の実現していかなければなりません。

 これまでたくさんの鑑定書を提出してまいりました。その中で脅迫状の筆跡と石川さんの筆跡が一致しないこと、脅迫状についているべき指紋が全くついていないこと、現場に残っていた犯人の足跡は石川さんの家から押収された地下足袋と符合しないこと、石川さん宅から発見された万年筆のインクの成分と被害者が使用していた万年筆のインクの成分が不一致であることなど、これらは科学的に明らかになっています。また、石川さんの当時の識字能力では誤字のない脅迫状を書くことはできない、という鑑定も出ています。

 昨年8月、弁護団はこれらに関する事実取調請求書を裁判所に提出しました。これに対し、検察は今年の2月・3月に証人尋問やインクの鑑定など必要ない、とする書面を提出しました。弁護団は検察の書面に対する反論を提出する予定であり、裁判所に証人尋問・鑑定の実現を迫っていきたいと思います。

参加者によるデモ行進

弁護団報告の後、片岡明幸・部落解放同盟中央本部副委員長より基調提案がなされ、その後、連帯アピールが行われました。今年3月に「袴田事件」において再審開始が決定した袴田巌さんの姉・ひで子さん、袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会・山崎俊樹さん、「足利事件」で再審無罪になった菅家利和さん、「東住吉事件」において再審無罪になった青木恵子さん、鎌田慧・「狭山事件」の再審を求める市民の会事務局長によるアピールが行われました。

最後に小林美奈子・部落解放中央共闘会議事務局長が集会アピール文を読み上げ、赤井隆史・部落解放同盟中央本部書記長が閉会挨拶を述べ、集会は閉会し、デモ行進を行いました。デモ行進終了後、解散となりました。

人権擁護推進本部 記