【人権フォーラム】2022(令和4)年度第2回人権擁護推進主事研修会報告
曹洞宗人権擁護推進主事研修会が3月15日から16日にかけて宗務庁にて開催されました。今回は昨年12月に任命された人権擁護推進主事にとって、最初の研修会となります。
日程1日目、はじめに戸田光隆人権擁護推進本部次長導師のもとでの開会諷経に続き、被差別戒名物故者追善法要を執り行いました。続いて服部秀世人権擁護推進本部本部長の開会挨拶があり、不破一浩人権教育啓発相談員より「人権擁護推進主事に就任された皆様へ」と題した講演をいただきました。
講演では、僧侶になぜ人権学習が必要なのか、現地学習(フィールドワーク)の意義、また、あらゆる物事や問題を多角的・多面的にみる必要性、人権擁護推進主事として持つべき心得などについて話されました。
続いて、法政大学法学部金子匡良教授より「人権とは何か」と題し、ご講演いただきました。以下、講演の一部をご紹介します。
はじめに、人権はどのようなイメージがあるか、国語辞典にはどのように定義されているかについて説明されました。次に、「国語辞典には人権を事実(~である)かのように説明しているが、人権は事実ではなく、事実の矯正を求める規範(~であるべき)です。それゆえに人権は本来的にはフィクションであるという認識を持つ必要があります。人権の概念は、フィクションであるからこそ人権を実現するための継続的な取り組みが不可欠であり、人権というものを実際に実践していく必要があります」と述べられました。
現代日本での日常生活において最も頻繁に発生する人権侵害とは差別であり、その差別の要因として①怨恨・憎悪・悪意、②偏見、③知識の欠如、④ストレス、⑤自己肯定欲求/自己承認欲求、⑥攻撃本能の六つを挙げ、講演では②偏見について中心にお話しされました。
差別のパターンとして「~だから」、「~のくせに」のような「偏見」に基づく否定的なレッテル貼り(ラベリング)によって生じてしまうことがあり、偏見と差別は互いに互いを強め合う関係にあり、偏見を持たれている人が差別の対象になり、差別の対象になってしまったが故に、ますます偏見を持たれていくというループができてしまい、この負のループを止めることが重要な課題であるとお話しされました。
講演後、各管区ごとに分かれ、班別会が行われました。続いて、班別会で話し合われた内容を基とした質疑応答が行われ、1日目が終了しました。
日程2日目は、一般社団法人精神障害当事者会ポルケ代表であり、2023年度教区人権学習資料作成に携わっていただいた山田悠平氏より、「人権と災害」と題して講演をいただきました。講演の一部をご紹介します。
はじめに、日本の精神医療の人権課題として長期入院、強制入院、身体拘束、虐待、一般科医療と分けられた精神科医療の五つの問題があることを話されました。
次に山田氏は、人権という観点で精神障害のことを他人事にしてほしくないと話されました。続けて、お伝えしたいこととして「人権のことというのはどこか表面的になりがちです。それは自分の生活圏のこととは少し毛色が違う話として抱いているからです。であるから具体的に何を共有したいのか、お伝えしたいのかという中で、それを考えていただくテーマ、内容、場面は変わるのではないかと思います」と話されました。
その具体的な一例が、2020年度教区人権学習資料『誰もが当たり前にお参りできる供養の場を目指して』でした。
「これは供養という枠の中で、場づくりということをテーマとしてお伝えさせていただきました。場づくりというのは、特定の誰かの問題ではなく全体の問題として供養の場に様々な人が参加しやすくなっているか。参加できないとされた人はどうして参加できないのか、ということも含めて、一緒に考えてほしいです。そういう中で人権ということを日々深く考えてほしいということをメッセージとしてお伝えしました」と教区人権学習資料作成に携わったときの思いや人権について日々考えていく必要性、大切さを話されました。
当事者活動を通じて人権の何を伝えるか、よりどうして伝えたいかが重要であること。また、社会の無理解や無関心は課題が潜在化してしまうことや障害のあるなしや性別・国籍などの違いによって差別されず、個性や特徴を認め合い、ともに活動する包摂性が大事であり、それが災害時にも大切であることなど、図を交えながらお話しいただきました。
講演後、第1日目と同様、班別会・質疑応答、また、二回の講演後の班別会での意見を発表する班別会報告が行われました。班別会報告では率直な意見・感想が発表され、質疑応答でも活発な議論がなされました。
今回の人権主事研修会は、オンラインを併用せずに全日程を対面開催で行うことができました。感染症等の事故なく終えられたことは、人権本部としても安堵しています。
次回、人権擁護推進主事研修会は今年9月を予定しています。
人権擁護推進本部 記