梅花流詠讃歌【諸行無常のひびき】①
人の此の世の儚さは
冥路に急ぐ露の身の
暫し仮寝の旅枕
あわれ常なき世なりけり
これは、「無常御和讃」の一番の歌詞です。
私たち人間の命は限られています。90歳、100歳、あるいはそれを越えて元気な人もいますし、一方で、10歳にも満たずにこの世から去っていく人もいます。命の長短はありますが、全ての人は「此の世」から去ってゆく運命を背負っています。これは単なる事実ではなく、絶対的真理です。
おおよそ45億年と言われている地球の歴史を考えると、100歳を越えて永らえたとしても、人の命は夜空を流れる星の一瞬のかがやきに過ぎません。あっという間に消え失せてしまいます。
明日のことさえ予測の出来ない命であり、風が吹けば跡形もなく消え去ってしまう、草の先に結んだ露のようなものとも言えましょう。
人間にとって、死は絶対に避けて通ることの出来ない事象であり、この世のわが身の存在は、長い旅路の中の一夜の仮寝に過ぎないと言ってもいいでしょう。そのことはしっかり自覚する必要があります。
この世のすべては時の流れと共に移ろうことを私たちは知っています。しかし、無常のただ中にあって、自分の一生をより良いものにするにはどのような心構えが必要なのかを考えている人は少ないような気がします。
「どうせ死ぬんだから、どうにでもなれ」「短い一生だから、今が楽しければいい」という気持ちで日々を送っている人がいたとするならば、それは正しい考え方ではありません。楽しい人生を送ることは否定しませんが、ただ楽しいだけではなく、人間として生を得た以上は尊く生きたいものです。
良き人生を送るためには心構えと努力が必要です。その努力と工夫を促すために仏の教えがあります。
梅花流詠讃歌の歌詞や、ちょっとした日常の出来事を通して、豊かに生きるためのヒントを考えようというのがこのコーナーです。どうぞよろしくお願いいたします。
秋田県禅林寺住職 山中律雄