梅花流ことはじめ【その24 最終回】梅花流正法教会誕生

2022.12.05

この連載も今回で最終回となります。【その1】で私はこんなことを述べました。「梅花流の成立を考えるという
ことは、当時の社会や人々の心情に思いを馳せることになる」と。戦後という舞台で展開された多くの話題を採りあ
げて来ましたがいかがだったでしょうか。

さて、曲・歌詞、詠唱・作法に関する基本的な教え、譜など、具体的なことが整えられ、いよいよ組織として梅花講が曹洞宗教団に位置づけられることになります。

それは昭和30年5月のことでした。その少し前、同年1月に宗務庁教化部より「曹洞宗立梅花会支部規約」が発表されました。これは暫定的のものだったらしく、その後すぐに新たな規定が発表されていますが、内容的には梅花講の実質的な面をよく表したものです。それは構成員に関する条項です。それは「曹洞宗に属する梅花婦人会」はじめ「仏教婦人層を中心とする我が曹洞宗一般檀信徒諸姉を以て組織する」というもので、女性中心の会が当初は企図されていたのです。またこの規約の中には「当支部会員には総本部発行の機関雑誌『禅の友』と称する一部十円の月刊誌を無料配布する」とあります。『禅の友』と梅花流の間には、こんなつながりがあったのです。

こうして、同年5月「梅花流正法教会規約」が発表されました。

第一条 本宗は、梅花流正法教会を設け、その総本部を宗務庁内に置く。
第二条 本会は、正法に依遵し、仏祖の恩徳を讃仰して詠讃歌を奉唱する本宗の僧侶、檀信徒及び同信同行の者を会員とし、その信念を培養し、資質を向上するを以て目的とする。

ここに明らかなように、女性に限定しない、僧侶・檀信徒を含むより広い層を対象としたことがわかります。規約はさらに、同会の会長は宗務総長、総裁は曹洞宗管長、名誉総裁は両大本山貫首と規定されています。こうして梅花講は、曹洞宗教団内の組織として正式に位置づけられたのです。

これ以後、梅花流活動は盛んになり、他流に遅れて誕生した梅花流は、現在では屈指のご詠歌講となりました(梅
花流正法教会はその後発展的に解散して、曹洞宗梅花流となりました。現在、約六千講、講員約十万人)。どのよう
な組織でも発足当初の活動方針や理念は、時間の経過とともに変化し、また新しく作り直されていきます。組織の成長とは本来そういうものでしょう。ただそうして先へ向かって歩みを進める折々に、〈はじまり〉の頃にあった様々なできごとを振りかえっておくことは大切なことだと思うのです。

長い間、ありがとうございました。

秋田県龍泉寺 佐藤俊晃

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