【人権フォーラム】コロナ禍での人権学習の現在
昨年来の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、宗門内外を問わず社会のあらゆる場所で、人が集まることが困難になっています。そうした中、開催方法を模索していく間に、人権擁護推進本部が例年関わってきた様々な研修会や協議会の様相も一変しました。今回はコロナ禍での人権学習の開催方法の変遷と、現在の状況、そして今後の展望について紹介したいと思います。
2020年前半の状況は、多くの研修会などが中止という状況でした。いわゆる「三密」を避けるという感染症対策は、これまでの日時・会場を定めて集合するという研修会の開催を困難にしました。それでも夏から秋頃になると集合しない形での研修会の開催方法が模索されるようになりました。
特に長足の進歩を遂げたのがオンライン技術を用いた遠隔での学習会、研修会です。これは感染症対策としてテレワークが導入され、通信技術の普及したことが大きな役割を果たしました。対面を避け、在宅勤務でも会議に参加できるような双方向の通信が可能な環境が整ったことで、この技術を学習会や研修会に応用できるようになったことが大きな牽引力となりました。
このオンラインの長所は何といっても参加者や講師が移動、集合することで生じる感染のリスクを軽減できることです。また移動の手間がなく時間を効率的に使え、講義の後の質疑応答に、音声ではなく文字を使用することが、活発な質疑につながることもありました。
一方で、講師が受講者からの反応をつかみにくい点や、通信環境に左右され、機材の条件や技術の習熟度で、どうしても多少のトラブルが付いて回ること、フィールドワーク等の現地学習を遠隔で行うのは難しく、情報量が少なくなってしまう、などの短所もあります。
また、オンラインによらない学習会でもリスクを減らす試みが取られてきました。これまで教学部学事課と共働し、人権本部でも出講していた僧堂人権学習は、各地方僧堂が地域ごとに集まって開催されていました。しかし、昨年は講師が行っていた講義を学習資料として編集し、指導要領を作成することで各僧堂の人権担当役寮が講義を行う形で実施されました。各僧堂で異なる条件や環境の中で感染リスクを抑えつつ、なるべく均質な人権の基礎学習を提供できるようにとの配慮でした。
各宗務所で行われる宗務所人権学習についても、オンラインの導入や、一定の期間を定め、各自で水平社博物館に行き自己研修をするなどの工夫が行われていました。
2020年の後半に入ってくるとオンライン学習の方法として、日時を定めて皆が揃って学習するライブ方式だけではなく、講義、講演を録画し配信するということも宗門内外を問わず多くなってきました。この方法は双方向性は持ち難いですが、好きなときに学習でき、気になった部分を巻き戻したり、場合によっては倍速再生できるなど、各受講者の都合に合わせ易いことが特徴です。例年、春と秋に開催されていた全国人権擁護推進主事研修会も昨年度は中止を余儀なくされましたが、今年度の前半期については、この録画配信方式での集合しない学習を採用しています。
昨年度は中止だった管区内役職員等人権啓発研修会も今年度に入って開催されることとなりましたが、各管区の新型コロナウイルスの感染状況などの諸条件によって、開催方法は異なっています。関東管区は地域の感染者数の多さからライブ方式のオンライン開催となりました。中国管区では研修参加人数を絞っての集合開催となりましたが、講師の一部はオンラインでの参加です。東海管区は研修会自体は中止という判断をしましたが、それでも人権擁護推進主事の情報と意見の交換だけはオンラインで行われることになりました。
今年度の教区人権学習会も、集合を必須とせず、各自で学習いただけるような形態のご案内をして開催のお願いをしています。これは昨年に引き続いた措置ですが、当初より集合しての開催が難しいことを念頭に置いての資料作成に当たることができましたので、先月の本記事でも取り上げたような追加の補助教材などを用意することができました。
今後の各人権学習開催の見通しはとても難しいですが、オンラインでの学習参加や、人権学習教材の録画配信は、新型コロナウイルスの感染状況によらず、今後も選択肢の一つとして有効な手段と考えています。課題としては、現地学習等の臨場感を伴った学習機会確保のための方途の模索が必要です。
コロナ禍の様々な困難の中にあって、皆様からの様々なご助力、ご協力を頂きながら今後もより良い人権学習の機会を提供できるよう努めてまいりたいと思います。
人権擁護推進本部記