【International】両大本山南米別院佛心寺創立並びに南アメリカ国際布教総監部開設六十周年記念行事報告
本年11月22日より24日まで、ブラジル連邦共和国サンパウロ市の両大本山南米別院佛心寺で、創立並びに南アメリカ国際布教総監部開設60周年の記念式典が行われました。
サンパウロ州のグアルーリョス空港から40分ほど車で走った「リベルダーデ」という町に佛心寺はあります。町はサンパウロの中心地に面しており、非常に人通りも多く、活気溢れる町というのが第一印象でした。
ブラジルには日系人が200万人ほど生活しており、その半数以上はサンパウロ市で暮らしていると言われていますが、実際に現地を訪れてみると道行くアジア系の人の多さに驚かされました。海外旅行でヨーロッパやアメリカなどを訪れると、アジア人は物珍しく見られたりする場面に遭遇しますが、リベルダーデでは、現地の日系人と見分けが付かないということもあってか、そういった視線はまったく感じませんでした。町の中にも日本の商品を扱っているお店や、日本食を提供している店などもたくさんあり、自分は本当に遠く離れたブラジルまで来ているのだろうか、日本のどこかの町にいるのではないか、と錯覚するくらい、日本の物にあふれている町でした。
日本からは約70名が渡伯し、世界各地からの出席者も含め総勢約200名が参集し厳修された記念式典は、諸堂の除幕式と開眼供養の法要から始まりました。今回の60周年記念行事の法要は新しく建設された諸堂の除幕式や開眼の法要が多く、佛心寺が発展し続けているのを実感しました。前回の50周年式典のときに訪れた方々も新たに増築された伽藍を見学して感動されていたのが印象的でした。
今回の式典では除幕式で5ヵ所、開眼供養の法要を3ヵ所で行いました。中でも新しいモニュメントが建設された、生きとし生けるものすべてに感謝を表す場である「盡光苑」の工事は大規模な工事で作業は式典当日の夜中まで掛かりました。
今回の式典は日系人の方が多く参列されていることもあり日本語で進行していました。法要の際には法要解説係が一般参列者の方に日本語で説明し、その後にポルトガル語の通訳が入るという形で進行していきました。
また、式典の合間に現地の南アメリカ国際布教師の皆さまと喜美候部謙史教化部長との面談が行われました。また喜美候部教化部長より、現在宗門を挙げて取り組もうとしているSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)についての説明が現地の国際布教師になされ、南米の曹洞宗でもSDGsに取り組んでいくことが決定しました。また南米の各国際布教師より各寺院の紹介がバナーを使用してされました。
最終日の式典3日目には、南アメリカ国際布教物故者供養の導師を乙川暎元大本山總持寺監院が、60周年慶讃法要では喜美候部教化部長が、檀信徒総回向では采川道昭南アメリカ国際布教総監がそれぞれ務められました。この日は式典の最終日ということもあって一般の参列者の方も非常に多く佛心寺の境内は沢山の方で賑わいました。
式典の最後には記念昼餐会が行われ、日本から来た来賓の方と現地の日系コミュニティの方とで親睦を深め合い、3日間に亘る佛心寺での記念式典は円成いたしました。
11月25日からはブラジルから場所を移し、パラグアイ共和国イグアス市の眞應山拓恩寺において退董式・晋山結制が行われました。
サンパウロの空港から飛行機で約2時間、世界遺産の「イグアスの滝」で有名なイグアスフォールズ空港に向かい、そこから陸路で国境を越えます。日本にいると国境を陸路で越えるという経験はないので新鮮に感じました。空港から2時間ほど走るとイグアス居住区が見えてきます。イグアス居住区は町の中央を走る国道を中心に、道路に沿って町が形成されています。サンパウロと比べると自然豊かでのどかな風景が広がっているのが印象的な街並みでした。
拓恩寺はパラグアイ初の仏教寺院で、この寺院の建設は2010年に特派布教師として南米各地を巡回されていた北海道薬王寺住職田中清元師が同市を訪れ、日系開拓先没者法要を修行したことに始まります。今回はその田中師の退董式でした。
今回新たに新命披露をされた島崎允法師は南米国際布教師として拓恩寺に常駐されており、現地の日系人の方々からの信頼も非常に厚い方です。拓恩寺の運営委員会の方が「普通のお坊さんならみんなここまで運営を手伝っていません、島崎さんだからこそみんなここまで手伝っているんです」とおっしゃっていたのが、非常に印象に残っており、島崎師の人柄の良さがうかがえました。
3日間にわたる拓恩寺での記念式典が無事に円成できたのもこの拓恩寺を支える信徒の皆さま、そして新たにに就任された島崎師のお力があってこそだと実感いたしました。寺銘にあるとおり、今後も拓恩寺はパラグアイの日系人の心のよりどころとして未来を拓いて発展していくだろうと実感させられる式典でした。
今回の南米に於ける二大行事を通じ、仏教がインドから中国、日本へと伝播し、それぞれの場所で成熟したのと同様、南アメリカ各国においても、一仏両祖のみ教えは、その社会のニーズに応え、すべての人の心の拠りどころとなっていくことでしょう。
(国際課記)