梅花のこころ~梅花流詠讃歌~ 「誓願御和讃」
毎月発行の『禅の友』では「梅花のこころ~梅花流詠讃歌~」と題しまして、梅花流詠讃歌の曲をもとに、解説や執筆者の想いなどを紹介しています。今月は梅花流特派師範 山形県長泉院 石川茂稔による、「誓願御和讃」のお話です。
㈠ 顕れざれども隠れなき 本来そなわる道のある
㈡ 覚りて深きに届くほど 足らわぬ日毎の嘆かるる
㈢ 広きは教法の門にして 強きは分け入るこころざし
㈣ 人にも世にも光明よ 照らしてあまねく満ちわたれ
「誓願御和讃」
東日本大震災から七回忌に当たる年、有志の方々と被災地にある寺院の慰霊法要に参列しました。
商店街も整備され、新しい家も建ち、確実に復興に向かう様子を車窓から眺めながら到着すると、地元の梅花講員の皆さまが笑顔で迎えてくださいました。法要の後、講員さんと共に御詠歌をお唱えする中で、歌声が自ずと涙声に変わり、声をふるわせる講員さんのお姿に私自身も胸を打たれ、声になりませんでした。しかし、その後のお茶の席で、その中のおひとりが、「皆さんと一緒にお唱えさせていただいて、今日ほど御詠歌のありがたさを思ったことはありません」と言ってくださいました。
お唱えをとおしてお互いの心が通い合えたことがとてもうれしく、私たちの心もじんわりとあたたかくなりました。
建物は復興しても、心の復興は容易なことではありません。寄り添い続けること、祈り続けることの大切さを改めて思い、帰路につきました。
お釈迦さまは「一切の生きとし生けるものは幸せであれ(スッタニパータ)」との大きな誓願をお持ちでした。お釈迦さまの教えを学び、人とかかわって人を大切にする。そんな願いをもってすべての人の幸せを祈ることは、自分自身をも磨いてゆくことに他なりません。
「誓願御和讃」は、すべての仏さま、菩薩さまに共通した願いである「四弘誓願文」を歌にしたものです。自分の幸せだけではなく、見知らぬ他者の幸せへと大きく願いを拡大させてゆける私たちでありたいものですね。
皆さん、一緒にお唱えしてみませんか。