迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた・特別編『禅僧たちと座談してみた 第1回(全3回)』 コラム連載の経緯と、終えてみての感想
3年にわたって連載してきたコラム「迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた」。その終了を受けて、書き手である中年ライターと、毎回返答してくれた禅僧4人による座談会が行われました。
今回はその座談会を元に、全3回でこれまでの感想や、『修証義』というテキストがどう役立つのか、役立たせるのかについて、まとめてみました。
まずはこの連載について、その趣旨と経緯についてご紹介しましょう。
およそ130年前の明治期に、大内青巒居士によって書かれた『修証義』。道元禅師の『正法眼蔵』や一部の経典などを引きながら、曹洞宗の教えを端的に、整理された語り口で綴られたこのテキストは、曹洞宗の教えの中心にすえるべきものとして、長く曹洞宗内で研究され続けました。
数年前、現職の禅僧たちの講習用に最新の現代語訳が完成しました。そしてこの現代語訳は、ポプラ社から刊行された「えんぴつで般若心経」の中に収録され、多くの人に紹介されることとなったのです。
コラム「迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた」では、一般人であり門外漢であるライターが、『修証義』に1節ごと触れ、どう読んだのか、何を感じたのか、どんな疑問を持ったのかを語り、それに禅僧が答える、という形で連載されました。本編未読の方は、ぜひこちらから読んでいただければ嬉しいです。
さて、座談会では、まず『修証義』をすべてじっくりと読んだ、ライターの感想から語られました。
「一番の感想は、とても丁寧に書かれたテキストだなあ、という印象です。選びに選ばれた言葉や、逡巡なくきちんと仏教思想を体系的に整理したところなどは、その下準備にどれだけ時間がかかったのか想像がつかないくらいです。
一方で、全体的にとっつきにくいものであった、とも感じました。このテキストは曹洞宗の檀信徒、もっと広く捉えれば仏教徒に対するもので、現在大多数である無宗教の人たちに読ませることを前提にはしていないものです。それだけに、すらすらと読み進められるものではなく、語られている本質的な部分を汲み取りきれていないのではないか、という不安が常につきまといました。精読したとはいえ、身についたかと聞かれるとちょっと困るかもしれません……」
禅僧たちからは、こんな感想が述べられました。
「重要であり、ともすると曲解を招いてしまうおそれのある第1章などは、言葉を選んで、丁寧さよりも正確さを重視して口語訳をしたので、一般の人にはわかりにくかったかもしれません」
「底本をよく知る身からすると、この部分をこう読んだのか、というのがいちいち理解できたので、とても勉強になった。禅僧とのやりとりも、文字の上だけではあったが双方向の読み物として機能したのではないかと思いました」
「お経というのは、僧侶にとっては何千回、何万回と繰り返して読むもので、その中で「こういうことか!」と気づかされる、そういう書物です。理解の仕方、味わい方が一般の書物とこんなにも違うのか、ということが再確認できました」
「自戒の念を込めて申し上げると、禅僧からの返答は、ちょっと教科書的すぎたかな、と感じています。『修証義』を一般の人に伝えるための曹洞宗の公式な答えとして、正しさを担保しなくてはいけないのはもちろんですが、もう少し冒険的な解釈をしてもよかったのかもしれません。ライターさんが毎回費やした読み解くための労力や文章の熱量に、応えきれなかったのではないか、と反省しています」
ライターも禅僧たちも、反省しきりな座談会の冒頭となりました。しかし、もちろんそれだけではありません。ここから『修証義』というテキストの価値について大事なことが語られていきます。続きは次回に。
~ 「迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた」バックナンバー ~
『修証義』についての詳しい説明はこちら
曹洞宗宗務庁が監修し、ポプラ社より刊行されました『えんぴつで般若心経』が、曹洞宗ブックセンターで購入できるようになりました。
収録されるお経は、般若心経をはじめ、『修証義』を全章掲載。さらには僧侶が日々の修行で使用する偈文などを網羅。えんぴつでひと文字ひと文字、丁寧になぞることで、様ざまな典籍に親しむ、ポプラ社のなぞり本シリーズは、累計で150万部のベストセラーとなっています。正しい智慧の実践をとく禅の教えを丁寧になぞりながら、写経のこころを味わえます。
『えんぴつで般若心経』
大迫閑歩/書、曹洞宗宗務庁/監修、ポプラ社/発行
B5判並製 182ページ 定価:1,000円(税別)
【曹洞宗ブックセンター】
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