梅花のこころ~梅花流詠讃歌~「大聖釈迦如来成道御詠歌(明星)」
毎月発行の『禅の友』では「梅花のこころ~梅花流詠讃歌~」と題しまして、梅花流詠讃歌の曲をもとに、解説や執筆者の想いなどを紹介しています。今月は梅花流特派師範、千葉県 新井寺、松井 量孝先生による、「大聖釈迦如来成道御詠歌(明星)」のお話です。
明けの星仰ぐ心は人の世の 光となりて天地にみつ
「大聖釈迦如来成道御詠歌(明星)」
12月8日は、お釈迦さまがおさとりを開かれた「成道」の日です。
29歳で出家されたお釈迦さまは、断食などのいのちがけの修行を6年間続けられました。からだはすっかり痩せ衰え、骨と皮だけになっていました。このように極端にからだを傷めても「仏智 」を得ることはできないと気づき、「苦行」をやめたと伝えられます。そして、「道をさとるまではここを立つまい」とかたく心に決め、ガヤという街の菩提樹の下でしずかに坐禅を組み、心を深められました。それから8日目の朝、東の空に夜明けの明星が輝くころ、心の闇は智慧の光に照らされ、深く心に抱えていた疑問もすっきりと解けていきました。ついにおさとりを得られたのです。
「明けの星仰ぐ心」とは、お釈迦さまのおさとり、そのみ教えといえましょう。
修行道場などでは、お釈迦さまの成道をお慕いし、12月1日から8日の未明まで、ただひたすらに坐禅を続ける「臘八摂心」がつとめられます。臘八摂心を了え、見上げた満天に輝く星は、今でもわたし自身の眼に美しく映っています。
生きてゆくということは、思うにままならない。苦しみと不安に満ちあふれている。その現実とどのように向きあえばよいのか、しあわせに生きるためにはどうしたらよいか。ここに仏教の出発点がありました。その教えは、時代を超え、苦しみと不安の中に生きる世界中の人びとの支えとなってきました。お釈迦さまの慈悲の光が、はるか未来の人びとにも普遍満ちわたりますように。
皆さまもどうぞご一緒にお唱えいたしましょう。