【International】サウス・バイ・サウスウェスト2019 参加報告
3月8日から17日の10日間、米国テキサス州オースティン市にて「音楽」、「映画」、「インタラクティブ」の三部門にわたる世界最大規模の見本市であるSXSW2019(サウス・バイ・サウスウェスト)が開催されました。曹洞宗は昨年に引き続き、経済産業省の依頼により、現地に赴任している小島秀明両大本山北米別院禅宗寺国際布教主任、伊藤大雅曹洞宗国際センター書記、横山行敬北アメリカ国際布教総監部書記、出向庶務担当の4名が協力しました。
SXSWはオースティン市街地を会場に1987年に始まり、音楽と映画、ITなどデジタル分野を巻き込み、現在では多数のアーティストやクリエイター、投資家が集まる世界的なイベントとなっています。今年は10日間の開会期間中に、約100の国と地域から8万人以上が来訪しました。
ツイッターやエアビーアンドビーなどのスタートアップ企業が世界的に広がったきっかけとなったイベントとしても知られています。
曹洞宗はSXSWの中でも世界中の各種業界のイノベーターや最先端テクノロジー企業、投資家などが集まり、イノベーションを通じて未来のあり方を検討する「インタラクティブ」部門に参加する経済産業省に協力しました。会場となった日本館「N E W JAPAN ISLANDS」は、日本国政府として初めて出展した施設であり、筑波大学准教授などを務める落合陽一氏が統括ディレクターに就任し、東洋思想を基礎として日本発の地球の未来像などを提案しました。
様々な業種のプレゼンターが日本文化やテクノロジーを紹介する中、9日と11日の両日に一時間の体験型の坐禅セッションを行いました。会場の中央には文殊菩薩を祀り、オースティン市内の禅センターから借用した坐蒲を準備し、禅堂の空間を演出しました。
はじめに、曹洞宗の修行映像を放映し、禅の紹介を行った後、僧侶による坐禅のデモンストレーションを行い、その後、会場の約40名に坐禅体験を行っていただきました。日本文化や思想、精神性や曹洞宗や禅に興味を持つ多くの方がセッションに参加されました。
3月10日に行われた「東洋的美的感覚」をテーマにしたパネルディスカッションでは、進行役を落合陽一氏、パネリストとして武蔵野大学データサイエンス学部の中西崇文准教授、小島秀明師が登壇し、国際真宗学会前会長で武蔵野大学名誉教授ケネス田中氏がサンフランシスコ市からオンラインで参加しました。
はじめに、落合氏からテーマである東洋的美的感覚の説明として、仏教や神道、茶道など精神性に関する事柄から、漫画やアニメなどのサブカルチャーの分野まで幅広く日本の文化が紹介されました。
小島秀明師は、川端康成がノーベル文学賞を受賞した際の受賞スピーチ「美しい日本の私」の冒頭で述べた道元禅師の和歌「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて涼しかりけり」を紹介し、目の前に単純真理があるにもかかわらず、しばしばその真理を忘れるのが人の世の現実であり、禅的美意識はこれからのデジタル社会、そしてグローバル化が進み、多様でより複雑な社会になる中で、普遍性をシンプルに表現できる有用な存在であると伝えました。
ディスカッションの最後に落合氏は、「仏教的な思考で今を生きることの大切さや侘び寂びが、コンピュータや科学の中で重要である」と述べ、締めくくりました。
最終日の3月11日は坐禅セッションに先立ち、東日本大震災被災物故者追善法要を執り行い、改めて被災地に思いを馳せました。8年前の2011年3月11日の震災当日もSXSW開催中であり、当時の参加者がイベントの予定を変更し、いち早く募金活動を行うなど支援が行われたそうです。
コンベンションセンターで同時開催されていたトレードショーでは、前国際センター所長藤田一照師が監修し、電通と東北大学が開発中の姿勢と呼吸の状態を検知するセンサー付きの坐蒲が展示されており、そこでも来場者の坐禅体験が行われていました。坐禅セッションやパネルディスカッションの後には、参加者から仏教や坐禅に関する質問が多く寄せられました。日本から遠く離れたテキサス州オースティン市で、多くのIT企業やイノベーターが集まるSXSWで、世界における禅に対する関心の高さ、また今後の国際布教の発展の可能性を感じることができました。
(北アメリカ国際布教総監部記)