梅花のこころ~梅花流詠讃歌~ ─「彼岸御和讃」 一番 ─
2019.03.05
連載・コラム
毎月発行の『禅の友』では「梅花のこころ~梅花流詠讃歌~」と題しまして、梅花流詠讃歌の曲をもとに解説や執筆者の想いなどを紹介しています。
今月は梅花流特派師範 茨城県泉福寺 小嶋弘道先生による「彼岸御和讃」一番のお話です。
山川険しき世なれども 仏の教えひとすじに
彼岸に至るしあわせよ あああめつちに陽はうらら
久遠の救いここにあり
「彼岸御和讃」一番
今年も冬の寒さを乗り越えて、暖かな陽ざしを感じられる春の彼岸を迎えました。
いつもお墓参りをつとめている女性の伴侶が、交通事故で亡くなったのは、十七年前の春の彼岸のことでした。会社の定年を間近に控えて、挨拶廻りの帰り道に不慮の事故に遭いました。
「彼岸御和讃」で「山川険しき世なれども」と詠われていますように、私たちは生きていく中で、様々な苦難が訪れます。
さて、彼岸とは「彼方の岸」という意味です。一般的には私たちが生きている悩み苦しみの多いこの此岸から、向こう岸へ渡りきったさとりの世界、理想の境地をあらわす言葉として用いられています。しかし、道元禅師は彼岸や此岸を区別することなく、いつでもどこでも修行することの大切さを説かれています。仏さまの教えを学びそれを行っていく、そのことが彼岸そのものであると教えてくださっています。
先述の女性も、悲しみの中で教えに出逢いましたが、その後のお孫さんの誕生や成長の喜びの中にあっても、いつも仏さまへ手を合わせる感謝のこころを大切にされています。
彼岸には、ご先祖様へのご供養やお墓参りを行うとともに、自分自身が仏さまの教えを学び実践してまいりたいものです。
皆さまもどうぞご一緒にお唱えいたしましょう。