【International】南アメリカ曹洞禅紹介動画撮影レポート
仏教は常に私の周りにありました。私は京都に生まれ、幼少期を父である奥村正博と南丹市園部町にある昌林寺で過ごしました。その後、父が指導者として渡米するのに伴い、私たち家族はアメリカ合衆国ミネソタ州へ移住いたしました。いくつかの夏はミネソタ州エイッツエンにある宝鏡寺で過ごし、大人たちが法要を行っている間、私は宝鏡寺の地下室で遊んだりして過ごしました。そのような環境で育ったため、曹洞禅は常に私の周りに存在し、特にアメリカ中西部の禅には馴染みがあります。
しかし、この度の南アメリカ曹洞禅紹介動画の監督と編集をするまでは、これほど曹洞禅が世界中に広がっていることを知りませんでした。今回の撮影以前は、私の住むロサンゼルスでメキシコ系アメリカ人の文化に触れることはありましたが、実際にメキシコ以南を訪れたことはなく、このプロジェクトは私にとって、曹洞禅と日本からの移民を通して新しい文化に触れる素晴らしい機会となりました。
私が仏教について初めて制作した映像は、父と弟を題材にした『SIT』(坐る)というショートドキュメンタリーでした。カーネギス法光国際布教師の提案により、年に一度開催される北アメリカ曹洞禅連絡会議で『SIT』の試写会が行われました。この試写会を通じてできたご縁により、南アメリカ曹洞禅紹介動画の監督を依頼されるきっかけとなりました。
ブラジル連邦共和国へ出発するまでに、私は万全に準備を行いました。映像制作において、これは「プリプロダクション」と呼ばれる工程で、チーム内で制作映像についての創造作業と技術作業を行うことです。この作業は撮影カメラマンのカーフ・ベネット氏と私が映像を制作するうえで根幹となる作業で、私たちは既に『SIT』を撮っていたので、最初の段階で映像に対する良好な視覚戦略を持っていました。南アメリカ曹洞禅紹介動画は『SIT』のように美しく、映画のような映像にしたいと考えていたので、撮影は浅い被写界深度の長焦点レンズとローニン・スタビライザーを用いて、滑らかで静かなカメラの動きによって行うことにしました。ドキュメンタリー映像を制作する場合、常に正しい撮影器具を使用することによって、撮影中に何か問題が起こってもすぐに対応することができます。
私たちのサンパウロ到着を南アメリカ国際布教総監部の田原良樹師が迎えてくれました。彼のとても活気に満ち、友好的であり、なおかつ非常に努力家である性格は、映像制作者に向いており、ブラジル国内五ヵ所で行われる撮影の宿泊や旅程、インタビューの予約等すべてを手配してくれました。
最初の撮影はエスピリトサント州イビラス、静かで美しく、人里離れた山中に位置する禅光寺で行われました。
私たちはここで禅の教えを体験するため、バスで数時間かけて訪れた学生の団体を撮影しました。自然の中を歩く姿を、坐禅を学ぶ姿を、そして生け花の授業や食器を洗っているときの手を、静かにカメラに収めていきました。いつもは無軌道でふざけあっている10代の彼らですが、禅堂に入るとその平和的なエネルギーが彼らを静かな内省へと導きます。
禅光寺がある山を下りた後、お盆供養の提灯を飾るメンバーの方々を撮影するため、モジダスクルーゼス市にある禅源寺へ向かいました。婦人会の方々が素晴らしい日本とブラジルの料理を作っていました。移民開始初期に日本から移住した人々が、宗教と地域活動を求め、自分たちの第二の祖国に誘起した結果、曹洞禅はまず南アメリカの地へ渡ったことを、私はこの撮影を通して知り、その思いが今も脈々と受け継がれている証拠をこの禅源寺で見ることができました。
そして私たちはサンパウロへ戻り、両大本山南米別院佛心寺において、撮影を行いました。佛心寺は多くの日系移民、日系ブラジル人が住む、活気あふれるサンパウロの都市部にあります。インタビューでは、生け花を指導している日系ブラジル人の方に、彼女がお寺と共に歩んできた歴史、そこで育まれてきた社会についてお話しいただきました。その後、佛心寺で行われる行事や夕方に開催される坐禅会を撮影、この映像は地方で行われている禅光寺での禅の実践と、都市部で行われている坐禅会を対照的に捉え、曹洞禅がどの地においても存在することを立証しております。
サンパウロでの日程終盤に最も刺激的な場面を撮影することができました。一つは、私がサンパウロでの移動中にその標識を見かけた、ブラジル日本移民資料館でした。そこでは日本からの初期の移民が船でブラジルに渡ったという、この動画にとってとても大切な場面を撮影できました。資料館には当時、日本から最初に到着した移民船の模型があり、資料館側は私たちの撮影を許可してくれました。
もう一つの撮影場所では、最も美しく重要なシーンが撮影されました。カメラマンのベネットは広大な大自然を撮影するためにドローンを持ってきていたのですが、巨大な都市も撮影したいと考えていたところ、田原師は私たちを高層ビル屋上のヘリポートへ案内してくれました。そこで私たちは田原師に坐禅を組んでいただき、後方からドローンで撮影、その映像はサンパウロの街を見下ろす、とても美しい映像となりました。僧侶がサンパウロのコンクリートジャングルの中で坐る姿は現代に進化した南アメリカ曹洞禅の姿を完璧に比喩した映像になりました。
次の撮影はリオグランデドスル州で、今回撮影で訪れた中でも、最も人里離れた場所に位置するヴィラ禅です。ここでいくつかのインタビューを撮影、その内の2名は典座寮で修行する男女です。朝の日差しの下、木製の台所で行ずる様子は美しい映像となりました。ヴィラ禅に坐する大きな大仏に見守られながら修行に勤しむ姿は、禅を通して人と自然が1つになっている様子を見事に映し出しています。また、別のインタビューでは、ソーザ孤圓国際布教師に、都会から逃れてきた人々にヴィラ禅が何を与えているかについてお話をいただきました。
これは重要なことですが、曹洞禅はブラジルだけではなく、南アメリカ全土に広がっております。他の撮影カメラマンが収録したペルー、コロンビアの映像はブラジルでの撮影後に編集いたしました。
南アメリカ曹洞禅紹介動画制作は私たちにとって冒険であり、ブラジルにおける多様な禅の側面を体験することのできる特権でした。曹洞宗の方々とお仕事を共にしたことは私にとって素晴らしい経験となりました。いつかまた一緒に制作できればと願っております。そしてこの動画制作に携わったすべての皆さまに、私たちをその一部として選んでいただいたことに感謝いたします。Obrigado.
奥村葉子
(国際センター訳)
動画1『南アメリカ曹洞宗のあゆみ』
h t t p s : / / w w w . y o u t u b e . c o m /watch?v=YlLII29Ubac
動画2 『禅とともに S o t o Z e n
Buddhism in South America』
h t t p s : / / w w w . y o u t u b e . c o m /watch?v=VqmUJ1MYhaI