【人権フォーラム】本部教材資料紹介 曹洞宗の差別問題と人権確立のあゆみ ―初期とりくみ篇―
『曹洞宗人権擁護推進本部紀要』第4號刊行の目的
曹洞宗人権擁護推進本部では、今年度新たな2種類の教材資料を作成刊行しましたので、その構成と内容をかいつまんで紹介します。
今回は『曹洞宗人権擁護推進本部紀要』第4號です。この研究紀要は「曹洞宗の差別問題と人権確立のあゆみ―初期とりくみ篇―」を主題として、おもに第3回世界宗教者平和会議部落差別発言事件から確認糾弾会にいたるまでの約1年4ヵ月間の宗門内外の動向を、当時の原資料(未公開も含む)をもとに調査した研究報告です。
1979(昭和54)年9月の第3回世界宗教者平和会議差別発言事件にまつわる運動団体等との交渉については、すでに周知のことであり、現在でも宗門の各種研修会の人権学習のテーマとして取り上げられています。(最近では、本年度『現職研修』№39所載「差別と人権を考える基礎講座4」)当時の曹洞宗宗務総長の国際会議での発言と、それに対する運動団体および社会からの広範な批判や、確認糾弾を受けての宗門の取り組みについてはよく知られています。しかしながら、発言時点から確認糾弾会開始までの約1年半もの宗内外の動向については、ほとんど空白となっていて、あまり関心をもたれていないようです。
さらに、一般には、第3回世界宗教者平和会議差別発言事件から曹洞宗の部落問題の取り組みが始まったと説明されることも多いのですが、実は曹洞宗と部落問題との関わりはそんなに浅いことではないことも分かってきました。
これらのことを踏まえて、いま一度、第3回世界宗教者平和会議差別発言事件前後の宗門の動向を再点検する目的で本紀要は編まれました。
『紀要』第4號「はじめに」から
今回新たに刊行した『紀要』第4號のはしがきを次に引用して、重ねてその発刊意図をお伝えします。
当時の曹洞宗の代表者による国際会議での発言を、現代の私たちは「差別発言」という大前提で見ているが、そのような歴史的な情報や知識がなければ、はたして正しく「差別発言」と受け止めたであろうか。もしかしたら、当時の曹洞宗僧侶のように問題意識もなく、理由にならない言い訳を繰り返しているかもしれない。過去を語るということは、けっして固定化し定説化した「歴史」を無批判に繰り返すということではなく、過去の歴史を鏡として、他ならぬ現代の私たちのあり方を再検討することも含んでいる。
おもな構成・目次
『曹洞宗人権擁護推進本部紀要』第4號「曹洞宗の差別問題と人権確立のあゆみ―初期とりくみ篇―」のおもな構成と目次を次に上げます。
凡例
報告篇
はじめに―なぜ過去を語るのか―
第1章 概史
第1節 曹洞宗と部落差別問題前史
第2節 第3回世界宗教者平和会議における発言問題
第3節 第3回世界宗教者平和会議発言問題の批判報道
第4節 運動団体から曹洞宗に対する抗議書・申し入れ
第5節 抗議書・申し入れに対する曹洞宗の初期回答と対応
第6節 糾弾会出席に至るまでの宗内外の動向
第7節 政府・地方公共団体からの質問と調査
資料篇
第1章 第3回世界宗教者平和会議差別発言に対する確認・糾弾会報告(『曹洞宗報』報告記事)
第2章 「第3回世界宗教者平和会議」差別発言事件に対する確認・糾弾会開催までの主な資料集(概史史料)
第3章 部落解放同盟の申し入れに対する曹洞宗の回答書(第4回糾弾会前提出資料集)
年表 前史から第3回世界宗教者平和会議差別発言事件に対する確認・糾弾会開催まで
あとがき
書誌情報
▽書籍名称
『曹洞宗人権擁護推進本部紀要』第4號「曹洞宗の差別問題と人権確立のあゆみ―初期とりくみ篇―」
▽ 発行日 2018(平成30)年5月31日
▽ 編集 人権擁護推進本部創設30年記念事業『曹洞宗の差別問題と人権確立のあゆみ』編纂委員会
▽発行者 釜田隆文
▽発行所 曹洞宗人権擁護推進本部
▽体裁 A5版 353頁 並製本
▽ 執筆協力者 深澤信善 北小路瑞浩 柚木祖元 坂田徹応 関口孝俊 久保井賢丈(敬称略)
活用対象と方法
研究報告とその資料集という内容ですので、初歩的な人権啓発研修会における配布教材としてはいささか難しいかもしれません。
管区・宗務所および僧侶養成機関等主催の各種研修会での講師や報告者の方の基礎資料としての活用をお勧めします。
また、従来の第3回世界宗教者平和会議差別発言事件についての研修や講習を受けられたことのある人で、さらに部落問題と曹洞宗の取り組みの原点を学習する意欲のある方が活用いただけるような内容ともなっています。関係機関にはすでに各1部を贈呈させていただきました。
詳しい内容等についてのお問い合わせやご注文については、下記までご連絡ください。
お問い合わせと注文先
曹洞宗人権擁護推進本部
〒105―7544
東京都港区芝2-5-2 曹洞宗宗務庁
TEL:03-3454-3546
所定の資料送付申請書でご注文ください。
(人権擁護推進本部記)