【International】SOTO禅インターナショナル主催 2018年度海外子弟研修会開催報告
SOTO禅インターナショナルが主催する海外子弟研修会が、昨年12月に続いて曹洞宗両大本山布哇別院正法寺(以下、布哇別院)を主会場兼宿泊場所に、8月18日~23日の6日間で開催されました。北米から始まり、ハワイへと会場を移し、早いもので今回が4回目になります。
全国各地より、中高生の男女各3名ずつ、計6名の参加者たちは、保護者とスタッフに見送られ、8月18日夜9時20分の便に搭乗、成田空港を出発しました。
この日が初対面ということもあり、当初は緊張気味で口数も少ないように感じられましたが、長い空路の上で互いに触れ合い、少しずつ打ち解けたのか、ホノルル国際空港に到着する頃にはすっかり気心の知れた仲になってくれており、引率の立場としては有り難く感じました。
入国審査を通過すると、布哇別院の吉田宏慧国際布教師から、1人1人に歓迎の証であるレイを掛ける出迎えを受け、ホノルルの地に第一歩を踏みだし、その後、直ちに布哇別院へ向かいました。
到着後まもなく研修会の開講諷経に参加した後で、駒形宗彦ハワイ国際布教総監からの歓迎の言葉に続いて、日系移民とハワイの曹洞宗および仏教の歴史についてお話しいただきました。子弟たちは、研修の意義と参加できた喜びを再確認したようでありました。今回の研修会では、ハワイの仏教の一大行事であり、移民一世の時代から大切に守られ受け継いできた大切な伝統と誇りでもある「盆ダンス」を体験し、ハワイに根付いた移民の仏教と曹洞宗の歴史を学んでもらうことに主眼を置き、開催時期を設定いたしました。
参加者一同が布哇別院に到着したときには、すでに婦人会やメンバーたちが本堂階下のホールで盆ダンスの出店準備を始めていました。英語で交わされる会話の中で慌てふためく参加者たちの姿も想像できましたが、まずは体験第一、と自分たちの荷物の整理もそこそこに、準備の手伝いに加わりました。
その後共に夕食を取り、いよいよ盆ダンスの開始です。日本の盆踊りとの違いは、納涼会ではなく、あくまでも祖霊を歓迎する儀式を保っていることにあります。必ずお寺で開催し、櫓やぐらの上で僧侶の回向が勤められます。迎霊の回向が終わって、初めて櫓に踊り手の輪ができるのです。新しい曲や岩国音頭・福島音頭と長く受け継がれた曲や、沖縄の曲等が演奏されます。踊り手はめいめいに法被や浴衣を身に着けて、日系人ばかりでなく、様々な文化を持つ人々の輪の中に参加者も交わり、皆ともに楽しく踊っていました。
第2日目は朝から布哇別院のメンバーが盆ダンスの片付けに駆けつけていました。参加者たちもその作業を手伝い、午後からは次の研修課題である、オアフ島内の曹洞宗寺院であるワイパフ大陽寺・ワヒアワ龍仙寺・アイエア太平寺をお参りしました。
特にワイパフの大陽寺では、同寺十世小澤義浄師のご子息である小澤ヲルターさんから、移民たちが炎天下のサトウキビ畑での重労働を乗り越え次世代に夢を託した話や、太平洋戦争の犠牲になり悲壮な強制収容所で過ごした小澤氏の実体験や収容者たちの苦労をうかがい、その生々しい歴史を学ばせていただきました。また、移民たちは、曹洞宗をはじめ各宗派のお寺に集って先祖を敬い、祖国の慣習や伝統を学び、二世たちも日本語を学び文化を継承させたことなど、多くの真実を生きた言葉で参加者たちに伝えていただきました。
これらの涙と汗の歴史を知り、昨夜のハワイの盆ダンスが、お寺を中心に大切なものを遺し、伝える場であり、かつ憩いのひとときと互いの絆を守る、1年間で最大の行事であることを感じられたことと思います。
第3日目は、日系の枠を越え、ハワイの文化と歴史を学ぶためにビショップ博物館を見学し、ガイドの説明に耳を傾けながらハワイ王朝の繁栄と衰退について学習しました。また太平洋国立軍人墓地へ足を向け、緑の芝生に整然と並ぶ兵士たちの墓に手を合わせ、ダイヤモンドヘッドから空港まで一望できる高台から南国の景観を眺望しました。その後は悲しい歴史から視点を変え、現代の華やかな一面を体感すべく、観光客が必ず訪れるアラモアナショッピングセンターで買い物など自由時間を過ごしました。
最終日となる第4日目は、他宗派・他宗教を見聞するため、日蓮宗ハワイ別院を訪問し、ハワイでの日蓮宗の歴史を平井智親総監より説明いただきました。また荘厳具や法具について、曹洞宗との違いや用法など身をもって研修いたしました。その後、出雲大社ハワイ宮では、天野大也総監から歴史を学びました。今回は特別に、宮司や巫女さんが着用する衣袴を実際に身にまとい、出雲式の参拝方法を体験することができました。
夕食は出雲大社を会場に、曹洞宗・真言宗・金光教・日蓮宗の布教師とその家族も集まり、送別会を催していただきました。信仰を通して文化伝統の誇りと共に守り伝えているハワイという地域だからこそ、宗派宗教を越えた交流を体験できたのではないでしょうか。
現地4日間という短い滞在期間ではありましたが、これらの日程の合間に、ヌアヌパリを見学し、カイルアビーチで海水浴、それからワイキキ散策など、ハワイならではの観光気分も楽しみ、各々に有意義な研修となりました。以下に参加者の感想を紹介いたします。
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帰りの飛行機を降りたとき、日本独特の体にまとわりつくような熱気を感じ、私は今すぐにでも飛行機に乗ってハワイに引き返したいと思いました。それくらいハワイの方々が大好きになりました。この研修に以前参加したのは冬だったので、またハワイの違った顔が見ることができるのだと、私はとてもわくわくしていました。しかし、今回は参加者の中で最年長だったので緊張もありました。
私が心に残っていることがあります。みんなで踊った盆ダンスです。去年は経験できなかったことでしたし、ハワイのお寺にも盆ダンスがあるのだと初めて知りました。実際に踊ってみるとその踊りの上手さや歌は日本さながらで、みんな生き生きとしていました。振りが分からず困っている私を見ると、見ず知らずの人が丁寧に教えてくれ、たくさんの優しさと文化に触れました。
そして、最も印象に残っているのは他の宗派の方との交流です。日本では、ほかの宗派の方々と関わる機会があまりないのですが、ハワイではまったく違いました。すべての人たちが助け合って生きている、そんな感じがしました。様々な宗派の方とお話をしてその宗派の文化を学んで、これこそがオハナ(※現地の言葉で「家族」や「仲間」)だと思いました。この研修を通して私はハワイの文化、その地に住む人々の温かさを肌で実際に感じました。この様な素晴らしい経験ができるのは、一生に一度だと思います。私はこの出会いを大切にし、これからまた一歩前へと踏み出したいと思います。そしていつかまた、ハワイのオハナに会いに行きます。
宮崎花香 16歳
私が研修会で学んだことは、たくさんの国の文化が混ざりあったハワイの文化です。1日目の盆ダンス。日本でも盆踊りを見たり、実際に踊ったりすることはなかったので、余計に驚きました。いろいろな人種の人が同じ言葉を話して、一緒に櫓を囲んで、日本の曲で踊っていたからです。そして、2日目、3日目にお寺を回ったりビショップ博物館に行ったりする中で、たくさんの文化が混ざりあっているのがハワイなのだなと思いました。
また、日本のような和の造りだと想像していたお寺もいろいろな宗教が混じっている様に感じました。キリスト教の教会のような長椅子があったり、お経にはローマ字でルビがふってあったり、外観はイスラム教のようにしているという話も耳にしました。その様にすることで、たくさんの人に受け入れやすくなっているのだと感じました。1番驚いたのは、他宗派、他宗教とも深い関わりを持っているということです。日本では考えられなかったので、他の宗派や宗教のことを学べるいい機会になりました。
初めてのハワイだったのですが、観光でハワイに行くだけでは知ることがなかったことや、経験できないことができたので、自分にとってとても有意義な研修会になりました。
久保井彩日 15歳
今回の研修会に参加させていただき本当にありがたく思っております。今回の徒弟研修で学べたことは「異文化交流」と「沢山の宗派と交流すること」です。異文化の交流については初日にあった盆ダンスがとても心に残っています。私は踊らなかったのですが輪の外から見ていると、日本の盆踊りを、日系人の方だけでなく外国の方々が一緒に踊っているのを見て、日本の文化が他国に伝わっていることがすごいと感じました。
2日目には、宿泊した布哇別院以外の、オアフ島にある3つの曹洞宗のお寺を訪問しました。その中で、太平寺で見た和太鼓にも、日本の文化が伝わっていることに感動しました。2つ目の大陽寺のまわりに一面に広がるサトウキビ畑は、移民の方が苦労して広げてきたことを聞き、心に残っています。次にパンチボールというクレーターの丘の中にある太平洋国立軍人墓地に行きました。そこに何万とある戦没者のお墓を見て戦争の悲惨さを感じました。しかしその後、パンチボールの展望台からホノルルを見渡せる景色を見るととても綺麗で、言葉が出ませんでした。
翌日朝課に出させていただいたときに、日本と違うことがありました。それは、経本が大きくて外国の方でも読みやすいようにローマ字表記に工夫されていることでした。また、ハワイのお寺は教会のような造りになっており、海外の方でも親しみやすい工夫が施されていると思いました。
3日目は、ビショップ博物館に行きハワイ移民の歴史を学びました。今年はハワイ移民150周年で、本格的に移民が行われた明治の方を元年者(がんねんもの)と言うそうです。これをきっかけにハワイの歴史に興味を持ちました。さらにハワイの歴史を勉強し、次に来る機会があれば学んだことを確認しながら周ってみたいです。
「多くの宗派に触れる」では、今回は日蓮宗のお寺とハワイ出雲大社にうかがいました。出雲大社では袴を着るという一生に一度くらいの体験をしました。私にとってはまったく縁のないものと思っていたので、すごく貴重な体験ができたと思いました。日蓮宗のお寺では、曹洞宗と違うところに注目しながらと思い、お邪魔しました。私が気づいた異なることは、木魚ではないことと、リズムが少し異なっていること、導師が一番動作が多いと感じました。曹洞宗にはないものが多く、高級感があるようにも思いました。
最後に、今回の徒弟研修は私にとってすごく有意義な時間になりました。いままで以上に海外に興味をいだきました。またこのような機会があればもう一度挑戦してみたいです。
引率していただいた吉田先生はじめ関係者の方々、現地でお世話していただいた方々、そして今回一緒に参加できた仲間たちにこころから感謝いたします。
ありがとうございました。
高持利仁 15歳
私は今回研修会に行かせていただき、ハワイにいる日系人の歴史やお寺の様子について学ぶことができました。私は今、中学3年生で第2次世界大戦など戦争について学校で学んでいましたが、日本や、韓国、中国などの日本に近い国のことしか学ぶことができていませんでした。今回の研修会で、ハワイに住んでいる日系人が、第2次世界大戦の真珠湾攻撃でどのような体験をしたか、環境や生活がどのようなものであったのかを知ることができて、とてもいい経験になりました。また、当時他の国にいた日本人にもどのような影響があったのか、もっと知りたいと思うようになりました。
ハワイのお寺では、現地の人に合わせ教会にあるような椅子が本堂にあり、お位牌堂も日本とはまったく違う形で作られていていました。また、日本のお寺とは見た目もまったく違い、教えていただかないとお寺と分からないような外観のお寺もあり、宗教が同じでもその国ごとに現地の人に合わせたお寺になっているのだと感じました。そしてハワイのお坊さんは、お檀家さんの病院のお見舞いなど精神面も支え、寄り添っていてすごいことだと思いました。今回の研修会で多くのことを学ぶことができました。日本では分からないハワイの仏教と、日系人のお檀家さんの信仰の深さを感じることができました。私も世界を感じながら、日本の仏教や文化を大切に生活していきたいと思います。
水野愛子 14歳
私はハワイの研修を振り返って「異文化」を実感しました。初めてハワイに来てお寺を見たときに、お寺というよりは教会に見えました。さらに中に入ってみると畳は1枚もなく、長椅子が並べられ、これらは文化の違う外国の方になじみやすいように造られたと思いました。印象に残ったのが日本の文化を好んで取り入れるハワイの方々でした。盆踊りがハワイでもあり、太鼓まであることには驚きました。ハワイのかき氷は、シロップとソースが氷の半分以上もあり、まるでアメリカンな日本の文化でした。英語が不安でしたが、自分の思いを伝えたら会話が通じ、話が弾むことで英語は楽しいと改めて思いました。この貴重な経験を、日頃の学校生活に生かしたいです。
柴田典大 14歳
私は今回の研修会に参加し、ハワイと日本の文化の違いを学びました。その中で特に印象に残った出来事が3つありました。
1つ目は盆踊りです。今回の研修で引率してくださった吉田先生に背中を押され、盆踊りの輪の中に入りました。初めての盆踊りを、見様見真似で踊って難しかったけど楽しかったです。2つ目は寺院視察です。太平寺、大陽寺、龍仙寺の三つのお寺を巡り、ハワイの歴史などをお話ししていただきました。その中で印象に残った話が、ハワイに日本人が布教をしに来たときに言語の壁があり大変苦労したということです。そして仏教をハワイの人に馴染みのあるものにするため、本堂を畳ではなくじゅうたんにして、椅子を置くように工夫したことも印象にのこりました。3つ目は日蓮宗別院参拝です。そこでは住職さんに曹洞宗と日蓮宗の違いを教えていただきました。絡子ではなく輪袈裟を身に着け、信仰の対象も曹洞宗では釈迦牟尼仏ですが、日蓮宗は南無妙法蓮華経だということを教わりました。
私は今回の研修へ行き、1年中暑いハワイで仏教がどのように浸透したのかという歴史がわかり、また個人的にとても勉強になったと思います。また機会があったら参加したいです。
阿部慎也 13歳
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今後、この研修を通して体験し学んで植えた未来への種は、今後日々の研鑽という肥料を加え、参加子弟それぞれの個性の彩りをもった花を咲かせることでしょう。 合掌
引率報告
SOTO禅インターナショナル監事
前ハワイ国際布教総監部賛事
静岡県富士宮市萬松院住職 吉田宏得