迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた ~曹洞宗のお経を一般人が読むと?(総序・第一節)

2016.10.20

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honbun初めて触れる『修証義しゅしょうぎ』の本文を読み、鉛筆を手に書き写し、また現代語訳を読む中で感じた事を率直に語っていきます。まず初回は、総序第1節について。

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ライター 渡辺ロイさん

■ライターはこう思いました

ずいぶんと大変な、いかにも難しそうなことから入るのだなあ、というのが素直な感想。
いや、言っていること自体は決して難しくない。それどころか、とても単純。
「生きるとは、死ぬとはどういうことか」を見極めるのが、仏教にとって最大級に重要だ。それしか言っていないのだから。
でも、とてもドシンときます。

「生と死」を厳密に、そして万人が納得するように定義付けするというのは、大変難しいことです。いうまでもありませんが。
さまざまな宗教はもちろんのこと、科学分野(生理学や心理学)からもこれまで多くのアプローチがなされてきたし、国の制度や法律もこの根源的な問題をどう扱い運用するかで、常に紛糾し続けていますし。

ただ『修証義』では、この「生と死」を切り分けて考えないよ、と宣言しています。
苦しみながら過ごしている「生」の中こそ、仏教的な教えを活用出来る現場であり、死ぬまでの「期間」自体を悟りとして捉えなさい。「死」を無駄に怖がったり、ゴールのように考えるのもちょっと違うよ。そう言っていると解釈しました。

最近、私たちが見聞きしたりする情報は、やけに効率的です。
「これさえ食べれば血液サラサラで長生きできる!」とか、「この交通事故を起こした人物は、日頃からこんないい加減な人だった」とか。原因と結果を最短距離で結ぼうと(あるいは結んでいるかのごとく見えるように)しています。
物事を単純化した形で提供すれば、納得するのは簡単です。万人に短時間で納得してもらえるように、共感してもらえるように、単純化することが風潮となっているんです。これは大変、胡散臭い。

「風が吹けば桶屋が儲かる」が笑い話なのは、ひとつひとつの原因と結果が単純で「さもありなん!」と納得しそうではあるけど、それをつなげることでバカバカしい結論が導き出される、という構図になっているから。
物事を単純化して、切り分けて、飲み込みやすくする「だけ」では、全体の正しさや美しさ(もしかしたら悲しみや苦しみも含めた複雑さかもしれませんが)を見ることはできないんです。

『修証義』の冒頭は大変そうなところから始まっている。
ということはつまり、逆に信用がおける、ということかもしれないんです。
このくらいの難しそうな導入で気持ちをぐっと引き締めるくらいで、ちょうどいいのかもしれません。

 

img04_f■禅僧がライターへこう応えました

生と死に関わる『修証義』冒頭の問いは、多くの人にとって思いがけないものかもしれません。でも私たちは、この問いから目を背けるわけにはいかないのです。それは誰もが今を生きていて、いつかは必ず死を迎えるからです。
死を考えることを後ろ向きと感じる人もいるでしょうが、死を意識して初めて、生を正しく位置づけられるようになることも事実です。死を考えることは実は、より良く生きるためにこそ必要な思考プロセスなのです。

そして『修証義』は、生きる理由を死後に先送りする事をしません。「この人生を頑張った人には、ご褒美に素晴らしい死後の世界が用意されている」とは考えないのです。
「生まれてから死ぬまでのこの人生の中にこそ、確かな生きる意味が成立しうるのだ」と言われたとき、あなたはどう感じますか?そして「生死しょうじの中に仏あれば生死なし」とは、一体どういうことなのでしょうか?

『修証義』を通して、この問いの答えを一緒に探していきましょう。

 

~ 「迷える中年ライターが『修証義』を書き写してみた」バックナンバー ~

『修証義』についての詳しい説明はこちら


 

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